仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
「後藤アナ、本当に史彰のことを狙ってるのね。史彰はもう既婚者なのに」
「はは、もう執念かもね。もともとアプローチは前からされてたけど、番組で接していて結婚を考えられるような性格じゃないなあって敬遠してたんだ。今は俺狙いというより、俺の幸せを壊したいのかも」
それってものすごく怖い性格だ。諦めるとか、嫌いになるとかじゃなくて、攻撃的になるなんて。
私にあの手紙をくれた視聴者のことが頭をよぎり、背筋が寒くなった。
一方で思う。史彰は出会ったばかりの私との結婚に、不安はなかったのだろうか。
「私が後藤アナみたいに怖いタイプの女子だったらどうするつもりだったの? 出会ってすぐに結婚を決めちゃったけど」
「夕子は……別。俺、伍代社長と奥さんに紹介してもらう前から夕子の動画をたまに見てたし」
「え? そうなの?」
なにしろ、史彰は自分で進んで料理をしたがるタイプでもない。私の料理動画に興味があるとは思えなかったのだ。
史彰はアルコールで赤らんだ頬を緩めて私を見つめる。
「うちのパラリーガルの子が、一度差し入れだって手料理を作ってきたことがあったんだよね。それが夕子の動画を見て作ったって言うから、その時に初めて動画を見た。話す声が綺麗で、表情も優しくて」
「ええ……初耳」
「おしゃれな料理を作るのに『みんなでたくさん食べてくださいね』とか『お腹いっぱい食べたいときはパンに挟んでサンドイッチにしちゃってください』とか締めのセリフは親しみやすいだろ。ずっとそこが好印象だった」
「はは、もう執念かもね。もともとアプローチは前からされてたけど、番組で接していて結婚を考えられるような性格じゃないなあって敬遠してたんだ。今は俺狙いというより、俺の幸せを壊したいのかも」
それってものすごく怖い性格だ。諦めるとか、嫌いになるとかじゃなくて、攻撃的になるなんて。
私にあの手紙をくれた視聴者のことが頭をよぎり、背筋が寒くなった。
一方で思う。史彰は出会ったばかりの私との結婚に、不安はなかったのだろうか。
「私が後藤アナみたいに怖いタイプの女子だったらどうするつもりだったの? 出会ってすぐに結婚を決めちゃったけど」
「夕子は……別。俺、伍代社長と奥さんに紹介してもらう前から夕子の動画をたまに見てたし」
「え? そうなの?」
なにしろ、史彰は自分で進んで料理をしたがるタイプでもない。私の料理動画に興味があるとは思えなかったのだ。
史彰はアルコールで赤らんだ頬を緩めて私を見つめる。
「うちのパラリーガルの子が、一度差し入れだって手料理を作ってきたことがあったんだよね。それが夕子の動画を見て作ったって言うから、その時に初めて動画を見た。話す声が綺麗で、表情も優しくて」
「ええ……初耳」
「おしゃれな料理を作るのに『みんなでたくさん食べてくださいね』とか『お腹いっぱい食べたいときはパンに挟んでサンドイッチにしちゃってください』とか締めのセリフは親しみやすいだろ。ずっとそこが好印象だった」