仮面夫婦とは言わせない――エリート旦那様は契約外の溺愛を注ぐ
「そ、そっかあ。今日で半年だね。本当だ。ケーキってそのためだったの?」
「本当はどこかで用意すべきだと思ったんだけど、俺はきみが作る料理が一番好きだから、ケーキもきみに作ってもらいたくて……」

私は嬉しくて恥ずかしくて花束に顔を埋めてしまいたくなった。

「半年記念のお祝いかあ。気づかなくてごめんね。ありがとう。花束嬉しいよ」
「ケーキとか、手間だったよな」
「綺麗に美味しくできてるよ。ふたりでお祝いしよう」

薔薇を飾り、ワインを開けて食事にした。
小さなホールケーキは半分にして食べた。カロリーを取りすぎなので明日に残そうかと思ったけれど、史彰が嬉しそうにケーキを食べる姿を見ていたら私も一緒に食べたくなってしまった。やはり彼と過ごしていると、私の体重はあっという間に増えてしまうだろう。

食後、残ったワインをソファで楽しんだ。以前はイメージアップの写真撮影をしたけれど、今はなんの理由もなくふたりで晩酌をしている。私たちの距離は随分変わった。

「出会って半年かあ。もっと長く一緒にいる気がする」

私が言うと、史彰が目を見開いた。

「俺も、俺もそう思ってた」

その純真な目に胸がきゅんとする。史彰のまっすぐな好意を感じた。この人は私を大事に想ってくれているのだ。

「一緒にいると楽しいね」

私が微笑むと、史彰がぐっと顔を近づけてきた。
大きな手が頭を撫で、頬に降りてくる。唇まで数センチ、止める気にはなれない。
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