【完結】王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています
第5話 素直になれない気持ち
リオの自室には多くの華の香しい匂いが漂っており、大きな壺には大きな流木や木、そして大きめの花が立てかけられている。
そしてテーブルには比較的小さめの花が並べられており、その花のうちの一つであるローズピンクの花を一つ手に取ると、茎の部分を水につけてハサミで切った。
パチンと鳴り響く以外に音は全くせず、リオの表情も真剣そのものである。
切った花を剣山に刺すと、少し手前に傾けるようにしてバランスをとる。
「できた」
そうして出来上がった作品をあらゆる角度から眺めて、満足そうに一つ頷くとリオはそれを自室の本棚の横にあるテーブルに飾った。
飾り終わった後でリオはベッドに座り込むと、はあと一つ大きなため息を吐いて考え込む。
(そろそろいつもならフィル王子のところに行く時間だけど、なんか行く気になれない)
リオの心はもやもやとして晴れず、先日のことばかり考えていた。
(なんであんな……あんな押し倒すようなことをしたの? 女なら誰でもああいうことするの?)
いやいやと顔を振って自分の考えを否定すると、自分の中で結論を立ててみる。
「違うわっ! 二人が嫌だったのよ。自室で二人になるのが」
思わず口に出てしまう言葉に自分自身でもう一度納得させるように、腕を組んでうんうんと頷いてみせる。
『男を甘く見るな』
途端に、銀色の髪が艶めいて自分を見下ろしながら言葉を発するフィルの言葉に心臓がドキリと跳ね上がってリオの顔は思わず赤くなる。
自分自身の顔に両手を当てて目を潤ませてきょろきょろとさせるリオは、そのままベッドにある枕に突っ伏した。
「私が恋なんてするはずないじゃないっ!」
枕の中にある羽毛に消えていったその嘆きは、その次に呟く言葉も打ち消した。
「だって、恋なんて女の子としてできる立場じゃないもん。私は国を背負っていく身。決められた男の人と結婚して、公の場では女性と結婚したことになる」
リオは自分の運命を理解し、そしてそれを全うしようとしているがゆえに自分の中に芽生えた恋心かもしれない感情に蓋をすることにした。
そうして、考え込むうちに1日、また1日と過ぎていき、トラウド国の王から食事の誘いがあるまでフィルのもとに行くことはなかった。
◇◆◇
豪華絢爛とも呼べるトラウド国の来賓用のダイニングには、トラウド国の王とリオが食事の席についていた。
「いやあ、うちのフィルとも仲良くしているようでなによりです」
「フィル王子は博識と聞いておりましたので、様々な知識を教えていただいて非常に学ばせていただいております」
「それはよかった。王は元気か?」
「はい、本日の食事会も本来であれば出席したいとのことでしたが、どうしても外せない公務がございまして」
外せない公務と言うのは真っ赤な嘘であり、ルーディアム国現王──リオの母親はトラウド国王のことが心底嫌いであり食事会にもなるべく参加しないようにしている。
それをおくびにも出さずにリオは公務であると言い張り、そっとワインを口にした。
「ルーディアム国とはこれからも友好的関係を築きたいと思っていてね。こうして親睦を深めることができて嬉しいよ」
「わたくしも嬉しく思います。若輩者ではございますが、ルーディアム国とトラウド国の架橋となれるよう努力いたしますので、よろしくお願いいたします」
リオはワイングラスを置き、深く礼をすると、トラウド国王は満足そうにそれに応じて同じ気持ちであると告げた。
(はぁ……ちょっと飲みすぎた)
リオはトラウド国王との食事を終えて帰宅するための馬車に向かおうと廊下を歩いていた。
(しかし、やはりトラウド国王の話は長いな)
食事会の小さな不満を心の中で呟きながら、足取りのおぼつかない様子で玄関へと向かう。
(あれ、こっちだったかな? 玄関はあっちか?)
無駄に広く入り組んだ廊下な上に、夜なのもあって薄暗く位置がうまくつかめなくなっていたリオは自分の居場所がわからなくなっていた。
千鳥足とまではいかないが、少しふらつく足で廊下を歩きながら出口を探すリオの景色は突然ぐらりと歪んだ。
「──っ!」
何者かに腕を引かれてリオは暗闇の部屋へと引き込まれてしまった──
そしてテーブルには比較的小さめの花が並べられており、その花のうちの一つであるローズピンクの花を一つ手に取ると、茎の部分を水につけてハサミで切った。
パチンと鳴り響く以外に音は全くせず、リオの表情も真剣そのものである。
切った花を剣山に刺すと、少し手前に傾けるようにしてバランスをとる。
「できた」
そうして出来上がった作品をあらゆる角度から眺めて、満足そうに一つ頷くとリオはそれを自室の本棚の横にあるテーブルに飾った。
飾り終わった後でリオはベッドに座り込むと、はあと一つ大きなため息を吐いて考え込む。
(そろそろいつもならフィル王子のところに行く時間だけど、なんか行く気になれない)
リオの心はもやもやとして晴れず、先日のことばかり考えていた。
(なんであんな……あんな押し倒すようなことをしたの? 女なら誰でもああいうことするの?)
いやいやと顔を振って自分の考えを否定すると、自分の中で結論を立ててみる。
「違うわっ! 二人が嫌だったのよ。自室で二人になるのが」
思わず口に出てしまう言葉に自分自身でもう一度納得させるように、腕を組んでうんうんと頷いてみせる。
『男を甘く見るな』
途端に、銀色の髪が艶めいて自分を見下ろしながら言葉を発するフィルの言葉に心臓がドキリと跳ね上がってリオの顔は思わず赤くなる。
自分自身の顔に両手を当てて目を潤ませてきょろきょろとさせるリオは、そのままベッドにある枕に突っ伏した。
「私が恋なんてするはずないじゃないっ!」
枕の中にある羽毛に消えていったその嘆きは、その次に呟く言葉も打ち消した。
「だって、恋なんて女の子としてできる立場じゃないもん。私は国を背負っていく身。決められた男の人と結婚して、公の場では女性と結婚したことになる」
リオは自分の運命を理解し、そしてそれを全うしようとしているがゆえに自分の中に芽生えた恋心かもしれない感情に蓋をすることにした。
そうして、考え込むうちに1日、また1日と過ぎていき、トラウド国の王から食事の誘いがあるまでフィルのもとに行くことはなかった。
◇◆◇
豪華絢爛とも呼べるトラウド国の来賓用のダイニングには、トラウド国の王とリオが食事の席についていた。
「いやあ、うちのフィルとも仲良くしているようでなによりです」
「フィル王子は博識と聞いておりましたので、様々な知識を教えていただいて非常に学ばせていただいております」
「それはよかった。王は元気か?」
「はい、本日の食事会も本来であれば出席したいとのことでしたが、どうしても外せない公務がございまして」
外せない公務と言うのは真っ赤な嘘であり、ルーディアム国現王──リオの母親はトラウド国王のことが心底嫌いであり食事会にもなるべく参加しないようにしている。
それをおくびにも出さずにリオは公務であると言い張り、そっとワインを口にした。
「ルーディアム国とはこれからも友好的関係を築きたいと思っていてね。こうして親睦を深めることができて嬉しいよ」
「わたくしも嬉しく思います。若輩者ではございますが、ルーディアム国とトラウド国の架橋となれるよう努力いたしますので、よろしくお願いいたします」
リオはワイングラスを置き、深く礼をすると、トラウド国王は満足そうにそれに応じて同じ気持ちであると告げた。
(はぁ……ちょっと飲みすぎた)
リオはトラウド国王との食事を終えて帰宅するための馬車に向かおうと廊下を歩いていた。
(しかし、やはりトラウド国王の話は長いな)
食事会の小さな不満を心の中で呟きながら、足取りのおぼつかない様子で玄関へと向かう。
(あれ、こっちだったかな? 玄関はあっちか?)
無駄に広く入り組んだ廊下な上に、夜なのもあって薄暗く位置がうまくつかめなくなっていたリオは自分の居場所がわからなくなっていた。
千鳥足とまではいかないが、少しふらつく足で廊下を歩きながら出口を探すリオの景色は突然ぐらりと歪んだ。
「──っ!」
何者かに腕を引かれてリオは暗闇の部屋へと引き込まれてしまった──