【完結】王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています
第6話 1週間ぶりの溺愛
腕を強く引っ張られてリオはそのままある部屋へと引き込まれたあと、気づくと何か温かいものに包まれていた。
状況を確認しようとするが、真っ暗な部屋であるがゆえに何も見えない。
そんな中、リオの上から聞き覚えのある声が降ってきた。
「なぜ俺のもとに来なくなった?」
リオはその声の主に抱き留められていると気づいたと同時に、その声がいつも自分が訪れていた人の声だと気づいた。
「フィル王子っ!」
「なぜ、来なかった?」
「そ、それは……」
まさか自分があなたに恋をしてしまったからかもしれないと気づいたからです、とは言えずに口ごもる。
すると、それまでのフィルからは想像もできないような言葉が返ってきた。
「会いたかった」
「え?」
それはまるで迷子になった子供が母親と再会して会えた時のような、はたまた遠距離恋愛のカップルが半年ぶりに会えた時のような、そんな縋りつくような安心したような声だった。
フィルの手はさらにリオを強く抱きしめ、そしてその首元にゆっくりと顔を落とす。
「フィル王子? 何かあったのですか?」
リオがそう問うてもフィルは黙って首元に顔をうずめてじっとしている。
そして愛おしそうに髪を優しくなでると、そのままリオの頭をなでて唇をつけた。
「フィル王子?!」
「ああ、会いたかった。来なかった時の日々、俺がどれだけ辛かったかわかるか?」
「え?」
「お前に会えない日々が何より暗く、何より重く、楽しくなかった」
まるで付き合っている恋人に告げるような甘い言葉を囁くフィルの声に、リオは段々顔が赤くなっていく。
(そんなこと本気で思ってくれてるの? やめて、そんなこと言われたら勘違いする)
リオは何か言おうとするも自分自身の素直な気持ちを言うわけにもいかず、黙って俯く。
「秘密をバラしていないのか見張るのは一体どうした?」
「それはっ! フィル王子なら言わない気がして……」
フィルはその言葉を聞いてふとリオの身体を自分から離して両肩に手を置くと、そのまま目を見つめて諭すように言った。
「男は平気で裏切る生き物だ」
そう言って今度は目を逸らし、本棚を見つめるフィル。
リオはフィルの何かを考え込んだような、あるいは何か特定のことを指しているようなそんな棘のある言葉に返答する。
「あなたも裏切るの?」
裏切るわけがない、と心の中で思いながらもリオは疑問を口にした。
「さぁ、どうだろうな」
静かな部屋でぼそっと呟いて消えていった言葉はなんとも物悲しく、リオは声をかけることができなかった。
すると、フィルはそんなリオの様子を見て一息吐くと、言葉を紡ぐ。
「今日は華でも生けるか」
「え?」
「食事も早めに終わったんだし、少しぐらい時間あるだろう? 一つ生けていけ」
「え、ええ」
(まさか、私が華を生けるのが好きなのを知って? そんな、まさかね?)
リオはうぬぼれそうになる自分を振り払うように首を振ると、部屋の入口にあった壺と花々のほうに向かった。
◇◆◇
リオが帰った後のトラウド国、謁見の間では国王と王子フィルが側近たちを出払わせて二人だけで何やら話をしていた。
「うまくいっているのか?」
「はい、つつがなく進んでおります」
国王は豪華絢爛な椅子に座して、その長い足を組んでそっと天を仰いだあと、フィルに目を向けてにやりと笑った。
「リオ王子、いや。姫がお前になびくのも時間の問題だな」
「……」
「くくく、姫を手中に収めたその時、待っているのは……」
不敵な笑みを浮かべて浸る国王に一つお辞儀をすると、そっとフィルは謁見の間を退席した。
状況を確認しようとするが、真っ暗な部屋であるがゆえに何も見えない。
そんな中、リオの上から聞き覚えのある声が降ってきた。
「なぜ俺のもとに来なくなった?」
リオはその声の主に抱き留められていると気づいたと同時に、その声がいつも自分が訪れていた人の声だと気づいた。
「フィル王子っ!」
「なぜ、来なかった?」
「そ、それは……」
まさか自分があなたに恋をしてしまったからかもしれないと気づいたからです、とは言えずに口ごもる。
すると、それまでのフィルからは想像もできないような言葉が返ってきた。
「会いたかった」
「え?」
それはまるで迷子になった子供が母親と再会して会えた時のような、はたまた遠距離恋愛のカップルが半年ぶりに会えた時のような、そんな縋りつくような安心したような声だった。
フィルの手はさらにリオを強く抱きしめ、そしてその首元にゆっくりと顔を落とす。
「フィル王子? 何かあったのですか?」
リオがそう問うてもフィルは黙って首元に顔をうずめてじっとしている。
そして愛おしそうに髪を優しくなでると、そのままリオの頭をなでて唇をつけた。
「フィル王子?!」
「ああ、会いたかった。来なかった時の日々、俺がどれだけ辛かったかわかるか?」
「え?」
「お前に会えない日々が何より暗く、何より重く、楽しくなかった」
まるで付き合っている恋人に告げるような甘い言葉を囁くフィルの声に、リオは段々顔が赤くなっていく。
(そんなこと本気で思ってくれてるの? やめて、そんなこと言われたら勘違いする)
リオは何か言おうとするも自分自身の素直な気持ちを言うわけにもいかず、黙って俯く。
「秘密をバラしていないのか見張るのは一体どうした?」
「それはっ! フィル王子なら言わない気がして……」
フィルはその言葉を聞いてふとリオの身体を自分から離して両肩に手を置くと、そのまま目を見つめて諭すように言った。
「男は平気で裏切る生き物だ」
そう言って今度は目を逸らし、本棚を見つめるフィル。
リオはフィルの何かを考え込んだような、あるいは何か特定のことを指しているようなそんな棘のある言葉に返答する。
「あなたも裏切るの?」
裏切るわけがない、と心の中で思いながらもリオは疑問を口にした。
「さぁ、どうだろうな」
静かな部屋でぼそっと呟いて消えていった言葉はなんとも物悲しく、リオは声をかけることができなかった。
すると、フィルはそんなリオの様子を見て一息吐くと、言葉を紡ぐ。
「今日は華でも生けるか」
「え?」
「食事も早めに終わったんだし、少しぐらい時間あるだろう? 一つ生けていけ」
「え、ええ」
(まさか、私が華を生けるのが好きなのを知って? そんな、まさかね?)
リオはうぬぼれそうになる自分を振り払うように首を振ると、部屋の入口にあった壺と花々のほうに向かった。
◇◆◇
リオが帰った後のトラウド国、謁見の間では国王と王子フィルが側近たちを出払わせて二人だけで何やら話をしていた。
「うまくいっているのか?」
「はい、つつがなく進んでおります」
国王は豪華絢爛な椅子に座して、その長い足を組んでそっと天を仰いだあと、フィルに目を向けてにやりと笑った。
「リオ王子、いや。姫がお前になびくのも時間の問題だな」
「……」
「くくく、姫を手中に収めたその時、待っているのは……」
不敵な笑みを浮かべて浸る国王に一つお辞儀をすると、そっとフィルは謁見の間を退席した。