【完結】王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています
第9話 十一年越しの想い
リオは姿見の前で自分の洋服を眺めていた。
(王子の格好でなければ、他の令嬢たちのような綺麗なドレスを着てお出かけできるのに)
姿見に映るのは凛々しい王子の格好の自分。
年相応の令嬢たちはドレスを着て社交界に行くのに、自分は王子としてしか参加できない。
そんな思いにはもう決別したはずなのに、どうしてかまたそんな気持ちがわいてくる。
(きっとフィル王子と関わってしまったからね)
フィルに密かに想いを寄せるリオは、その想いすら伝えられない現状に嘆き苦しんでいた。
(私はどうして、王子として生きなければならないの?)
そんな思いに苦しむように、床にしゃがみ込んで自分自身を包むように抱きしめてみるも、なんとも虚しさだけがそこにあった。
「いつかは忘れるわよね、この想いも」
そう呟いて、リオはいつも通りトラウド国のフィルのもとへと向かった。
「今日は遅かったな」
「すみません、少し公務の関係で」
「そうか、何もなくてよかった」
(もしかして、何かあったんじゃないかって心配してくれたの?)
そんな思いに考え巡らせるリオはそっとフィルに礼を一つして、いつも促されて座る椅子に座る。
「さて、フィル王子今日は何をしましょうか?! 物理学のお話ですか? それとも宇宙のお話をしましょうか? それとも楽器の──」
「いや、今日はお前と話がしたい」
「え?」
その言葉と同時にフィルはそっとリオに近寄ると、彼女の手を取って自らの唇をつけた。
「──っ!」
リオは戸惑い狼狽えるとその様子にいつもならからかうように笑うフィルだが、今日ばかりは真剣な顔を崩さなかった。
「俺と婚約してほしい」
「こん……やく?」
一瞬リオは自分が何を言われたのかわからなかったが、次第に頭の中に『婚約』という文字が正しく思い浮かび、顔を赤くしてさらに狼狽える。
「フィル王子っ! からかうのはおやめください! 私は『王子』であり、婚約をすることは……」
「お前が好きなんだ」
「──っ!」
あまりにも真っすぐに告げられる言葉と真摯なサファイアブルーの瞳に、リオの心は揺れ動く。
(どうして、フィル王子が私を? え? どんな風に答えれば)
そんな迷いをあらかじめ感じていたように、フィルはそっとリオの両手を握って告げる。
「答えは今すぐでなくてもいい。だが、俺は本気だ、このことはルーディアム国王、ノエル様にも今度相談するつもりだ」
「国王にも?!」
その言葉から事の本気さと大きさを改めて感じたリオは少し考えたあと、フィルに自分の想いを伝えた。
「わかりました。5日以内にお答えを必ずお伝えします。そして国王にも私から相談いたします」
「ありがとう」
こうしてフィルから告白を受けたリオは帰りの馬車の中で、顔を真っ赤にして両手でその顔を隠す。
(フィル王子が、私を?)
両想いだと知ったリオは馬車の中で嬉しさのあまり足をじたばたとする。
しかし、その数十秒後に二人に待ち構える障壁の多さに打ちのめされた。
(王子としての立場と本当の私、どうすればいいの?)
考えが思いつかずに馬車はもうルーディアム国に着いてしまった。
馬車の階段をゆっくりと降りた彼女は自室へとそのまま歩みを進める。
(どうすればいいの……5日以内に答えを出さないと)
リオを決めたこの5日という期限。
この期限内にリオはフィルと言葉を交わすことは一度もなかった──
(王子の格好でなければ、他の令嬢たちのような綺麗なドレスを着てお出かけできるのに)
姿見に映るのは凛々しい王子の格好の自分。
年相応の令嬢たちはドレスを着て社交界に行くのに、自分は王子としてしか参加できない。
そんな思いにはもう決別したはずなのに、どうしてかまたそんな気持ちがわいてくる。
(きっとフィル王子と関わってしまったからね)
フィルに密かに想いを寄せるリオは、その想いすら伝えられない現状に嘆き苦しんでいた。
(私はどうして、王子として生きなければならないの?)
そんな思いに苦しむように、床にしゃがみ込んで自分自身を包むように抱きしめてみるも、なんとも虚しさだけがそこにあった。
「いつかは忘れるわよね、この想いも」
そう呟いて、リオはいつも通りトラウド国のフィルのもとへと向かった。
「今日は遅かったな」
「すみません、少し公務の関係で」
「そうか、何もなくてよかった」
(もしかして、何かあったんじゃないかって心配してくれたの?)
そんな思いに考え巡らせるリオはそっとフィルに礼を一つして、いつも促されて座る椅子に座る。
「さて、フィル王子今日は何をしましょうか?! 物理学のお話ですか? それとも宇宙のお話をしましょうか? それとも楽器の──」
「いや、今日はお前と話がしたい」
「え?」
その言葉と同時にフィルはそっとリオに近寄ると、彼女の手を取って自らの唇をつけた。
「──っ!」
リオは戸惑い狼狽えるとその様子にいつもならからかうように笑うフィルだが、今日ばかりは真剣な顔を崩さなかった。
「俺と婚約してほしい」
「こん……やく?」
一瞬リオは自分が何を言われたのかわからなかったが、次第に頭の中に『婚約』という文字が正しく思い浮かび、顔を赤くしてさらに狼狽える。
「フィル王子っ! からかうのはおやめください! 私は『王子』であり、婚約をすることは……」
「お前が好きなんだ」
「──っ!」
あまりにも真っすぐに告げられる言葉と真摯なサファイアブルーの瞳に、リオの心は揺れ動く。
(どうして、フィル王子が私を? え? どんな風に答えれば)
そんな迷いをあらかじめ感じていたように、フィルはそっとリオの両手を握って告げる。
「答えは今すぐでなくてもいい。だが、俺は本気だ、このことはルーディアム国王、ノエル様にも今度相談するつもりだ」
「国王にも?!」
その言葉から事の本気さと大きさを改めて感じたリオは少し考えたあと、フィルに自分の想いを伝えた。
「わかりました。5日以内にお答えを必ずお伝えします。そして国王にも私から相談いたします」
「ありがとう」
こうしてフィルから告白を受けたリオは帰りの馬車の中で、顔を真っ赤にして両手でその顔を隠す。
(フィル王子が、私を?)
両想いだと知ったリオは馬車の中で嬉しさのあまり足をじたばたとする。
しかし、その数十秒後に二人に待ち構える障壁の多さに打ちのめされた。
(王子としての立場と本当の私、どうすればいいの?)
考えが思いつかずに馬車はもうルーディアム国に着いてしまった。
馬車の階段をゆっくりと降りた彼女は自室へとそのまま歩みを進める。
(どうすればいいの……5日以内に答えを出さないと)
リオを決めたこの5日という期限。
この期限内にリオはフィルと言葉を交わすことは一度もなかった──