本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
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麗かな気候が爽やかな四月某日。
高級住宅街の中に佇む、各国のVIPが集まる"VIP御用達"だと名高い【二階堂総合病院】
そのエントランスを恐る恐る歩いている一人の若い女性がいた。
茅野 由麻、二十二歳。
百五十四センチと小柄で細身な体型にウェーブがかったアッシュブラウンのミディアムヘア、奥二重の垂れ目が幼さを残す可愛らしい外見。
製菓専門学校を卒業後、実家の家業である老舗和菓子店、【茅】で和菓子職人として日々一人前になるべく修行中だ。
すれ違う看護師に縮こまるように会釈しながら彼女が向かうのは、院内の外科病棟。
ベージュのワンピースを揺らしながら歩く彼女の手には小さな籠があり、その中にはお見舞いのフルーツが入っていた。
外科病棟の十二階にある1201号室。その引き戸を軽くノックしてから、中から聞こえる返事にゆっくりと取っ手を右に引いた。
滑らかに開いた扉の向こうは、ここはどこかのホテルかと勘違いしてしまいそうなくらいの豪華な広い病室。
全室個室の高級病院なだけはある。
大きなクローゼットに備え付けの壁掛け液晶テレビ。簡易キッチンまであり、そこには冷蔵庫はもちろん電子レンジやケトルまで置かれている。
反対側にはリビングのようなテーブルとソファもあり、さらにその向こうには付き添い者が休む用のベッドルームも用意されている。
さすが病院の中でも最高ランクの部屋なだけある。
余りの場違い感に眩暈がしそうだ。
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