本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「懐かしい……!変わらない味で美味しいよ由麻ちゃん。ありがとうね」
「そうですか?良かったです。
実は朝急いで作ってきたから少し不安だったんです。餡子の塩梅とか。まともに味見してる時間も無くて。良かった」
「え!?由麻ちゃんが作ったの!?」
「はい。まだ見習いみたいなものですけど、一応これでも私も和菓子職人なので」
「そうだったんだ……。凄い美味しいよ」
「ありがとうございます」
和音は、由麻がこの苺大福を作ったということに凄く驚いていた。
昔好きで食べていた味と、全く同じだったからだ。
当たり前のようにお礼を言って愛美と話し始めた由麻を見て、和音は口角を上げる。
きっと、ここまでくるのに沢山の努力をしたのだろう。
その小さい手は女性の手にしては少し荒れていて、爪は綺麗に切り揃えられている。
それは努力の証。年頃でネイルだってしたいと思うこともあるだろうに。頑張ってるのが容易に想像できた。
その視線に気が付いたのか、由麻は自分の手をちらりと見つめてから笑った。
「あぁ、これですか?……やっぱり洗い物が多いからどうしても手荒れが酷くて。お菓子に直接触れるので、大したケアも出来ないんですよ」
寝る前に少しケアする程度。しかし調理前に必ず念入りに手を洗うから結局荒れてしまうのだ。
「そうなんだ。……痛そう。大丈夫?」
「はい。もう慣れました。それに和菓子って油脂が無いから、洗剤とか必要無いんです。だから洋菓子の洗い物してる方よりは手荒れはマシなんですよ」
「へぇ……」
知らなかった。そう言って和音は感心したようにもう一つもらった苺大福を見つめた。