本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「失礼します」
ノックが聞こえ、愛美が返事をするとからりと開いたドア。その向こうには愛美の手術を担当したドクターの姿があった。
「愛美、体調はどう?」
「翔さん。大丈夫だよ」
輪島 翔さん。代々続く医者の家系の長男であり、この病院が誇る日本有数の優秀な技術を持ち合わせていると名高い外科チームの筆頭ドクターだ。
そしてそれと同時に、愛美の婚約者でもあった。
「翔さんが手術してくれると思ってなかったからびっくりしたよ」
「そりゃあ、大切な婚約者のためだからね。事故に遭ったって聞いて飛び上がったよ。慌てて他のオペ終わらせて来たんだ」
毎日スケジュールは分刻みかという程に忙しい中、五分でも時間を作ってこうして愛美の顔を見に来るのが彼の日課となっていた。
むしろいつもは仕事が忙し過ぎてあまり会えなかったため、今はこうして毎日会えるのがお互いに嬉しかったりもする。
二人は一年前にお見合いを経て婚約。愛美が卒業次第結婚する予定なのだ。
お見合いがきっかけとは言え、元々知り合いでお互いがお互いを気に入っていたため恋愛に発展するのもさほど時間はかからず。
愛美が見ていてお腹いっぱいになってしまいそうな程に、二人はラブラブだった。
「和音さん。ご無沙汰しております」
「お久しぶりです。父と妹がいつもお世話になってます。手術の件も、翔くんが執刀してくれて良かった。ありがとうございました」
「そんな、医者としても婚約者としても当たり前のことをしただけです。こちらこそもったいないお言葉をありがとうございます」
和音と翔は久しぶりに会ったためか、しばらく話が弾んでいた。
愛美と由麻は二人のやり取りを柔らかく微笑みながら見つめていた。