本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「じゃあ、俺次のオペあるから行くわ」
「うん。頑張ってね!」
「ありがと。じゃあ、失礼します」
由麻と和音にも会釈した翔を見送ると、由麻もそろそろ仕事に行く時間になったため席を立つ。
「私もそろそろ」
「じゃあ俺も行くかな」
「そう?二人とも気を付けてね」
「うん。また来るね」
愛美に手を振り、二人で並んで病室を出た。
「由麻ちゃん、送るよ」
「え?大丈夫ですよ。和音さんまた迷子になっちゃいますよ?」
「大丈夫!昨日帰りに色々見て道覚えたから!」
「……」
由麻は疑いの目で和音を見るものの、その顔は何故か自信に満ち溢れている。
由麻はその自信が絶対に裏目に出るということをわかっていた。
しかし目上の人相手にそれを言う勇気は無い。
と思っている側から和音は「じゃあ行こう!」と先を歩き出すものの、そっちは由麻の目的地とは反対方向だった。
「……和音さん、逆です。こっちです」
「……あれ?ごめん。こっちか!」
「ははっ、行きましょう」
ここまで清々しいと逆に面白い。先が思いやられるなと思いながらも笑いながら歩き出すのだった。