本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
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「……ちゃんと帰れたかな」
由麻は商品を包装しながらポツリと呟く。
「誰が?」
隣から聞こえた声にハッとして慌てて首を横に振った。
「お前さっきから独り言多くない?何かあった?」
「……ううん、何でもないよ」
「……変な奴」
隣で同じように包装しているのは由麻の双子の弟、茅野 理麻。
由麻と同じ専門学校を卒業後、三代目である父親の跡を継ぐべく日々修行に励んでいる。
由麻は理麻の呆れたような視線から逃れるべく、目の前の仕事に集中した。
和音は無事に帰ることができただろうか。それが頭の中をぐるぐるしている。
それもこれも和音が方向音痴なのがいけないのだが。愛美から送られてきた"あれは病気よ。もう不治の病よ"というメッセージで二階堂家の苦労を色々察した。
仕事に遅刻する恐れがあって和音をそのまま放置してしまったのを由麻は気にしていた。
休憩時間にちらっと店頭を覗いてみたものの、当然そこにはもう和音の姿は無く、和音の連絡先も知らない由麻はとりあえず愛美に連絡を取る。
『お兄ちゃん?大丈夫大丈夫。迷うのなんて今に始まったことじゃないから。それにお兄ちゃん今は駅前のホテルに泊まってるらしいから茅から近いし外出れば建物見えるしね。どうにかなるでしょ』
「そ、そんなもん?」
『うん。だから大丈夫だよ。……でもそんなに心配なら連絡してやってくれる?私が連絡したところで出てくれないだろうし』
その言葉と共に電話を切られ、すぐに送られてきた電話番号。
それをまじまじと見つめて、連絡するべきか否か。五分程考えて。
このままモヤモヤしているのも嫌で、意を決して発信ボタンを押した。