本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
コール音が耳元で鳴り響き、少しするとそれが途切れた。
『……Hello?』
いきなり聞こえた英語に、思わず狼狽た。
ついこの間までアメリカにいたと言うのだからそれも当たり前か。
「あ、えっと……由麻です。和音さんですか?」
そっと声を掛けると、数秒の間をおいて驚いたような声が聞こえた。
『……え!?由麻ちゃん!?え!?』
自分のスマートフォンの画面を見たり耳に当てたりを繰り返しているようで声が遠くなったり近くなったりと慌ただしい。
それに小さく笑いながら
「和音さん。由麻です」
ともう一度言うと、
『……あ、えっと?』
とまだ混乱している様子だった。
「愛美から番号聞いたんです。ちゃんと帰れたか気になってしまって」
『あぁ、そういうことか。大丈夫だよ。迷わずに帰ってこれたから』
「そうでしたか。良かったです」
用件はそれだけだったため、無事に帰れたことを知ったら急に会話が止まった。
『ん?……由麻ちゃん?』
「あ、いえ。それが気になっていただけなので、特に他に用は無かったんです。すみません」
『ううん。俺こそ心配かけちゃったみたいでごめんね。わざわざありがとう。仕事はもう終わったの?』
和音は由麻に気遣ってか、会話を振ってくれた。
由麻はそれにホッとして、口を開く。
「いえ、今休憩中で」
『そうだったんだね。終わるの遅いの?』
「今日は遅番なので……締め作業してお店を出るのは多分二十時過ぎですね」
お店は十九時まで。そこから締めやら明日の仕込みやらで大体一時間はかかる。