本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「……由麻、いらっしゃい」
部屋の中央に向かうと、ベッドに横たわる艶やかな黒髪が印象のロングヘアの女性が体を起こした。
由麻はそれを制しながら、声を掛ける。
「愛美、どう?痛みは」
二階堂 愛美。由麻の幼い頃からの親友で、現在はこの1201号室に入院している。
この病院の院長を父親に、グループ会社の会長を祖父に持つ生粋のお嬢様であり、愛美自身も現在国公立大学の医学部に在籍中の学生だ。
艶のある黒髪ロングとスモーキーなメイクが映えそうな綺麗な末広二重の目が印象的。
由麻の顔を見るなりその表情は安心したように緩んだ。
「うん。痛み止め打ってもらったから今は大丈夫。薬切れた時がちょっと怖いけど」
「そっか。熱は?下がった?」
「うん。なんとかね。心配かけてごめんね」
「ううん、愛美が無事ならそれでいいよ」
「ありがとう」
愛美がここに入院したのは、僅か三日前のこと。
その日は丁度由麻と一ヶ月ぶりにレストランでのディナーへ出向いていた。愛美が食事を終えて由麻と別れて迎えに来た車で帰る途中、飲酒運転の車が対向車線に入ろうと左折。しかし曲がりきれなかったのか愛美が乗っていた後部座席目掛けて衝突してしまったのだった。
幸いにも運転手は打撲程度の軽傷。愛美も左脚の骨折と傷口を数針縫う手術はしたものの、命に別状は無かった。
すぐに救急車で運ばれたのは、この病院。
すでに院長として後身の育成に力を入れている愛美の父親が信頼する優秀な外科チームに執刀を任せすぐに終了。複雑な手術ではなかったことも幸いしたらしい。
今は手術を終えて二日。
連絡を受けてすぐに来たかったものの、怪我のせいで昨日まで高熱が出ていたらしくようやく熱が下がったこのタイミングでお見舞いに来た。