本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
そして迎えた仕事終わり。
実家に住んでいる由麻は両親に一応出掛けてくると伝えてお店から出た。
「……由麻ちゃん。お疲れ」
「和音さん。お待たせしました」
「行こうか」
「はい」
どうやら迷わずにここまで来ることができたらしい和音と合流して、一緒に並んで歩き出す。
「由麻ー!朝帰りは事前に連絡しろよー!」
「理麻!何言ってんの!うるさいよ!」
「はははっ!じゃあ楽しんでー!」
同じくラストまでいた理麻の声に顔を赤くしながら怒った由麻。
理麻はそのまま走って帰って行った。
和音は物珍しそうに二人を見比べる。
「……彼は?」
「すみません。私の双子の弟の理麻です」
「双子だったの?」
「はい。和音さんと食事に行くって言ったらずっとからかってきてて……お恥ずかしいです」
「はは、仲良いんだ?」
「そんな、普通ですよ」
朝帰りだなんて。食事に行くだけだって言ったのに。
理麻へのイライラは募るものの、今それを出すのは失礼だとどうにか口角を上げる由麻。
それに和音は柔らかく微笑んだ。
「由麻ちゃんは苦手なもの無いって愛美に聞いたんだけど、大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「じゃあ俺の行きたいお店、行ってもいい?」
「はい」
和音に連れられて着いたのは、駅の裏側にある高級寿司店だった。
「アメリカにも寿司はあるけどなんか物足りなくてね。やっぱり日本のが食べたかったんだよ」
「そうだったんですか」
それなら迷わずに着いて欲しいものだ。どこに行くかを教えてくれないからここに来るまでに普通十分も掛からないのに、二十分近く掛かった。
しかし和音はほくほく顔で。嬉しそうだからまぁそれでいいかと思う。
中は淡い照明がとてもシックな雰囲気で、大きな一枚板を使用したカウンターが目を引く有名なお店。
括りはレストランのため、奥には個室や小上がりもある。家族連れにも人気のお店だ。
予約していたのだろうか。待つ事も無くすぐに席に通された。