本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜

3




「……由麻?どうした?」


「……何でもない」


「この間は健全に帰ってくるしそれからずっと機嫌悪いし。本当にどうした?愛美の兄貴に何かされたのか?」


「……だから何でもないって言ってるでしょ!」


「本当大丈夫かよお前……」



数日後。由麻は酷い顔で和菓子を作っていた。


寝不足。その一言に尽きる。


先日の和音からの突然のキスにより、驚いたのと恥ずかしいのとムカついたのとときめいてしまったのとで自分にイライラしてしまい、ここ何日かまともに眠ることが出来なかった。


珍しい由麻の様子に毎日心配してくれる理麻にもわかりやすく八つ当たりしながら、どうにもならない感情で頭がぐちゃぐちゃだった。


だからといってこの感情を和菓子にぶつけたら全く商品にならないものが出来上がってしまう。


いつだって繊細さと丁寧さが求められる和菓子作りに、【お客様のためにより良いものを作る】それ以外の余計な私的感情はいらない。



「由麻、今日はもう上がりなさい」


「……お父さん」


「そんな状態じゃ、良いものは作れない」


「……すみません」


「いいんだ。気分転換でもしてきなさい。その代わり明日からはしっかり切り替えてくること。何か悩んでいるならいつでも話を聞くからな」


「はい。ありがとうございます」



和菓子づくりの師匠である父親に促され、由麻は予定より大分早めに上がらせてもらった。


頭を冷やすためにしばらく休憩室で休むものの気持ちは晴れず。


手持ち無沙汰になった由麻はこのまま家に帰っても悶々とするだけだと思い、愛美の元へ向かうことにした。

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