本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
数日振りに訪れる、愛美の病室。
ノックをすると「どうぞー」と軽快な声が返ってきた。
それにゆっくりとドアを開けると、ベッドの上で教材を広げて勉強中の愛美の姿。
「……ごめん。勉強中だった?出直してくるね」
「いいよ、丁度キリのいいところだったから。入って」
「……お邪魔します」
「そろそろ来る頃だと思ってたしね」
「え?」
愛美はにこやかに迎え入れてくれて、由麻はベッドの横にある面会者用の椅子に腰掛けた。
「由麻、お兄ちゃんが何かやらかしたみたいで本当ごめんね」
「……何か言ってた?」
「うん。いきなり来たと思ったら"由麻ちゃんに嫌われた……"って絶望してた」
どうやらすでに愛美には報告済みのようだ。
「何やらかしたのかまでは聞いてないんだけどさ。きっと酔った拍子に手出したんでしょ?お兄ちゃんって昔からお酒飲むと感情のままに動くことあるから」
「そうだったの?」
「うん。んで?由麻は何されたの?」
「……キスされた」
渋々答えると、愛美は大袈裟に目を見開いたかと思うとすぐに笑いだした。
「ははっ!やっば!」
由麻は笑い始めた愛美を能面のような顔で見つめる。
「いや、ごめっ……ははっ!」
愛美が笑い終えたのはそれから一分後。
目に浮かんだ涙を拭きながら何度も謝っていた。
「理麻が余計なこと言ったっていうのもあるんだけどさ」
「理麻が?何て?」
「朝帰りするなら事前に連絡しろよ、みたいなこと」
キスに至った経緯を伝えながら不貞腐れる由麻に愛美は何度も頷く。