本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「……でも、突き飛ばしちゃったのはやり過ぎたなって。ちょっと思ってる」
「いいのいいの。それくらいやってやんないとお兄ちゃんわかんないから。あの人は女心ってもんを全然わかってないからね」
「……」
ケラケラと笑う愛美に、由麻は言いづらそうに口を開く。
「……別に、嫌だったわけじゃないんだ」
「え、そうなの?」
和音が駆け込んできた時の感じから、由麻は和音のことが嫌なのかと思っていた愛美。
由麻の言葉は少し意外だった。
「……なんて言うか……。驚いたのと、恥ずかしいのとでパニックになっちゃって」
「……うん」
「ほら私、男性経験ってものがほとんど無いからさ」
「そうだね」
由麻は今まで男性から告白された経験は何度かあったものの、それにOKしたことはほぼ無かった。
理由を問われれば細かいものは色々あるのだが。
「だって、私もそのうち政略結婚するわけだし」
一番の大きな理由はこれに尽きるだろう。
小さい頃から将来は両親の決めた相手とお見合いして結婚するのだと教えられてきた。
お店は理麻が継ぐことが決定している。由麻は家のため、政略結婚することが自分の役割だと認識していた。
だから、どうせ誰かを好きになって仮に付き合えたとしても、その人とは結婚はできない。
それを知っているから、由麻は小さい頃から恋愛というものに対して興味が無かった。
諦めていたのだ。