本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「だから、……嫌ではなかった。うん」
むしろときめいてしまったなんて、愛美が聞いたらどう思うだろうか。
「……和音さんは、何で私にキスしたんだろう……」
酔ったはずみで?そこに女がいたから?女なら誰でも良かった?
……それとも。
考えて、小さく首を横に振る。
どうせ、和音を好きになったって良いことは無いのだ。
自分自身にそう言い聞かせている由麻に、愛美はそっとその小さな手を握った。
「……由麻」
「……」
「自分の気持ちに嘘だけは、つかないでね」
「……愛美」
「縁談だって、まだ何も決まっていないんでしょう?」
「……うん。まだ何も聞いてない」
「なら、少しくらい恋愛したっていいんじゃない?」
「え?」
意味がわからない、と言いたげな由麻とは裏腹に、愛美は全てを知っているかのような顔で由麻を見つめていた。
「私なら、何とも思ってない人からキスされたらブチ切れるよ?」
「え……」
「嫌じゃなかったってことは、少なからず好意があるからなんじゃないの?」
当たらずとも遠からず、といった愛美に、由麻はそっと顔を上げた。
「今の由麻見てると、翔さんとお見合いする前の私見てるみたいで。ちょっと心配」
「……愛美を?」
「うん。私ね、誰にも言ってなかったんだけど、実は昔から翔さんのことちょっと気になってたんだ」
「そうだったの?」
「うん。その頃の私もね、由麻と同じでそのうち政略結婚するんだから恋愛なんてする必要ないってずっと思ってたの」
確かに当時、愛美も恋愛経験は無いに等しかったということを由麻は思い出す。