本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「……別に、嫌いになんてなってません」
「……え?」
「さっき愛美にも言ったけど。驚いたのと恥ずかしかっただけです。べ、別に嫌だったわけじゃないから……」
本人を目の前にして言うのは尋常じゃないほどの恥ずかしさで。
段々と語尾が小さくなっていく。
和音はぽかんとしながらそれを見つめていて、愛美は二人を見ながら嬉しそうに笑っていた。
「え?……え?それって」
「私こそ、突き飛ばしたりしてすみませんでした」
由麻も頭を下げると、和音は逆に慌てて早く顔を上げるように促す。
「……痛かった、ですよね?」
「……と言うより、俺はあれで正気に戻れたからむしろ感謝してるけど」
逆にあのまま由麻が和音を受け入れていたら、本当にそのまま和音が泊まるホテルに連れて行かれていたことだろう。
もどかしい二人のやりとりに、ついに愛美が吹き出した。
「ふはっ!……はは、もう二人とも面白すぎ。お互い気にしすぎでしょ。もういい大人なんだから。キスの一つや二つくらいどうでもいいでしょ?」
「いやどうでも良くはないだろ」
「うん。どうでも良くはない」
揃う声に、また笑う。
そしてちょいちょいと和音を呼んだ愛美は、和音の耳元である提案をする。
「──なっ!?」
一気に顔を赤くした和音は、愛美をジロリと睨むものの。その赤い顔では締まりがなくて全く怖くないと愛美はケラケラ笑っていた。