本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜


由麻は二人のペースについて行けずにぽつんと立ち竦む。


そのうち愛美が



「ほら、これ以上は私が気まずいから他行ってねー」



と二人で出て行くように促してきて。



「え?」



驚く由麻に



「じゃあ由麻、また来てね!結果報告よろしく!」


「え?何が!?」



楽しそうにそう言い、由麻と和音はそのまま部屋を追い出されてしまうのだった。



「……なんか、ごめんね。愛美が強引で」


「……まぁ、今に始まったことじゃないので大丈夫です」


「……ちょっと時間ある?散歩でもしない?」



コクン。頷いた由麻を見て、和音はホッとしたように歩き出した。


向かった先は駅前。途中【茅】の前を早足で通る由麻は、隣を歩く和音に声を掛ける。



「……どこ行くんですか」


「ん?駅前広場。そこに綺麗な日本庭園があるって愛美が言ってた」


「……それなら道違います。向こうですよ」


「え!?」



また幻滅される。そう思って焦りながら辺りを見回している和音。


そんな姿に、由麻は思わず笑い出す。


自信満々に歩いていたのに、あのまま行ったら全然違うところに着いてしまう。


それが面白くて。



「ふふ、……本当、飽きないなあ」



呟いた声に、和音は目を見開いた。


すとん、と。心の中で何かが動いた音が鳴った気がした。

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