本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「……確かに、そうですけど」
「でしょ?」
「でも、和音さんだって縁談があるのでは……?」
愛美だってそうなのだから、長男で病院を継ぐ立場にある和音だって、当たり前にそういう話はあるだろう。
しかし心配する由麻をよそに、和音は困ったように眉を顰める。
「それがね、確かに昔はそういう話もあったんだけど俺が嫌がって断ってるうちに親父が諦めちゃってね。だからむしろ親父は俺が由麻ちゃんと結婚したいって言ったら大歓迎すると思う」
「だからってそんな話が上手いこと進むとも思えないし……」
もし、日取りが決まっていないだけで既に由麻のお見合い相手がもう決まっていたとしたら?
決まったものを取り消すことなどできないだろう。
そうなったら和音の出る幕は皆無だ。
「理麻……弟もお見合いしていて、その相手の方のご両親とは昔から縁談の話をしていたようなんです」
半年前に由麻もお見合いを終えて、まだ二十歳になったばかりの得意先の御令嬢との婚約が決まっていた。
だから由麻の相手が決まっていても不思議ではない。
それを和音に伝えると。
「んー……」
しばらく悩んで。
「わかった。一週間、時間もらってもいいかな?」
「え……あ、はい」
わけもわからないままとりあえず了承してしまった由麻。
そしてこの数日後、由麻の運命は大きく変わることになる。