本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「本当は他にもお話が来てたんだけどね。二階堂さんが是非由麻と一緒になりたいって何度も言うものだから」
「……え、ってことは直接言いに来たの?」
「そうよ。三日前くらいだったかしら?二階堂さんがご両親と一緒にお店に来てね、お父さんと私にお願いがあるって。 頭下げに来たのよ」
「そう、だったんだ……」
「今時そんなことする人がいるなんて思わないじゃない?それに由麻も二人でお食事するくらいなんだから嫌な人ではないんでしょう?」
「う、うん……」
「だったら尚更!断る理由なんてないもの!」
由麻以上に興奮気味の母親は、写真が載った冊子を取って横のテーブルに置いたかと思うと由麻の両手を取ってギュッと握る。
「……由麻、今までごめんなさいね」
「……お母さん?」
「貴女の人生を狭めていたんじゃないかって。ずっと考えてたの」
辛そうに下を向く母親を、由麻は初めて見た。
「由麻がずっと恋愛を諦めていたの、本当は知ってたのよ」
「……」
「私達もね、お見合いしてからの政略結婚だった。それが当たり前だと思ってたのよ。でも、やっぱり違うなって思って。
ずっと待ってたのよ。由麻に好きな人ができるのを」
「え?」
「お父さんとも相談したの。由麻が本当に好きな人に出会えるならそれでいいよねって。理麻にもそう伝えてたんだけど、あの子は頑なに"そんな相手いないから任せた"って言っててね」
「そう、だったんだ……」
顔を上げた母親は、目に涙を浮かべて微笑んでいた。