本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「由麻、最近とってもキラキラしてるって思ってた。ようやくその理由がわかって嬉しいわ。今"恋してる"って顔してる。凄く素敵よ」
何か言わなきゃ。そう思って口を開こうとしたタイミングで母親は厨房にいた父親に呼ばれてしまって。
滲んだ涙をそっと拭いて、厨房に声を掛ける。
「しんみりした話はお終いね。じゃあ由麻、お見合いは二週間後だから。明日訪問着の試着するからね!」
厨房に向かって行った母親を無言で見送り、もう一度冊子を開く。
和音の笑顔を見て、言葉にできない感情がぶわっと全身を包み込む。
……私、和音さんとお見合いするの?本当に?
話を聞いただけじゃ完全には信じられなくて、思わずスマートフォンを手に取って発信ボタンを押す。
数回のコール音の後に聞こえた声は、寝起きなのか掠れていた。
『ん……由麻ちゃん?』
「か、和音さんっ。あの、お見合い……」
『あぁ、話聞いた?』
「はい……」
しどろもどろになってしまう由麻とは対照的に嬉しそうな和音。
『まだ由麻ちゃんの見合い話が進んでなくてホッとしたよ。急な話になっちゃったけど』
「……」
『でも、これでもう障害は無いよね』
「……はい」
電話の向こうでは、和音は柔らかく笑っていることだろう。
その容易に想像できる笑顔を思い出して、声を聞きながら由麻は頰を染めた。
心地良く脳内に入ってくる声が、由麻の心を落ち着かせる。
『当日、楽しみにしてるね』
「……はい。私も」
いつもよりもあっという間に感じた休憩時間。
少しだけ冷静になってから厨房に戻った。