本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
会場は先日和音から告白された、あの日本庭園の先にある茶室。
庭園の中にある梅の並木は花が散り始め、地面に濃いピンク色の絨毯が広がっているかのよう。
真ん中にある小さな池の中にも花びらが舞い、濡れたところが光を反射してとてもキラキラとしている。
都会にこんなに和の趣を感じられる場所はあまり無いだろう。
庭園の中を歩いているだけで心が洗われていくような気がした。
池を渡るための橋を通り、奥に佇む茶室棟に入る。
「由麻」
「……お父さん、お母さん」
「由麻、とても綺麗よ」
「……ありがとう」
入り口前で両親と落ち合った由麻は、そのまま茶室の中へ向かう。
通されたのは【梅の間】という部屋で。
中は広々としていて、い草の香りがとても心地良い。部屋の名前の通り、開放的な窓の向こう側は先程の梅の木を中心とした庭園が一望出来る。
ここもとても趣のある素敵な空間だ。
由麻達の方が先に着いたようで先方はまだ来ておらず、下座に腰を下ろして景色を眺めながらドクドクと脈打つ鼓動を頭の中で聞いていた。
なんだか酸素が足りないような気がして、何度も深呼吸をする。
「……緊張してるの?」
母親の声に、何度も頷く。
そうしている間に、入り口の方から声が掛かった。
「──二階堂様がお見えです」
「どうぞ」
父親の声に、ふすまが開く。
立ち上がり、見えた姿に腰を折るように頭を下げた。