本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「遅れてしまったようで、申し訳ございません」
「いえ、お気になさらないでください。私共が早く着きすぎまして」
キリッとした視線にダンディでお洒落な男性が和音の父親の二階堂 天音。
その斜め後ろをついて歩くのが母親の唯香。ぱっちりとした二重が魅力の"美人"という言葉が本当によく似合う女性。そしてその二人に挟まれるように歩いてきたのが、和音だった。
高級そうなブランド物のスーツ。髪の毛は後ろに流していつもより少しワイルドに見える。
でも由麻を目の前にして微笑んだその表情は、由麻のよく知る和音の姿で少し安心した。
「由麻ちゃん、お久しぶりね」
「はい。ご無沙汰しております」
「ふふ、そんな固くならないで?私たち、由麻ちゃんと家族になれることがすごく嬉しいの」
「……ありがとうございます」
唯香さんの柔らかい笑顔に少し落ち着いた気がした。
「二人は元々知り合いなんだって?」
「はい。俺が病院で迷ってるところを由麻さんに助けていただいたんです」
「あら由麻、そうだったの?」
「あ、はい。困っていそうだったので、つい。そうしたら愛美さんのお兄さんだと仰るので。驚きました」
大人達の質問に一つ一つ答えていっているうちに良い空気のまま由麻と和音は"二人で散歩でも行ってきなさい"と促され、二人並んで再び庭園を歩いていた。
大人達は今頃豪勢な料理でも食べているのだろうか。
父親達はお酒でも飲んでいるのかもしれない。
そんなことを考えていないと、緊張でどうにかなってしまいそうだった。