本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜


着物を着る由麻のために、いつもよりも遅く歩いてくれる和音。


そんな些細なことが、嬉しくて。



「……由麻ちゃん、いつもは可愛いけど、今日はとびきり綺麗だね」


「っ……ありがとうございます」



ストレートな褒め言葉に赤面する。



「その着物も、すごく素敵だね」


「はい。前に仕立ててもらって。でも着る機会が無かったので今日着られてすごく嬉しいです」


「よく似合ってるよ」



言うが早いか、由麻の右手をそっと取った。


そして手を取り合ったまま、真っ赤な橋を渡る。


風に舞う梅の花びらが、二人を包み込んだ。


それが祝福されているように感じて、嬉しくなる。



「和音さんも、いつもと雰囲気が違いますね」


「うん。流石にお見合いとなったらね。気合入れてきた」


「……素敵です」



言いながら、恥ずかしくて下を向く。



「……やばい。人の目が無かったら襲ってたかも」


「なっ……」



聞き捨てならない言葉に由麻は思わず顔を上げるけれど、和音はそんな由麻の反応が面白いとばかりに笑う。


なんだか悔しくなったものの言い返す程の語彙力など持ち合わせておらず。



「ははっ、……本当可愛い」



それもまた、和音の心を擽る。

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