本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜


「……ここって、会員制じゃありませんでしたっけ……?」


「あぁ。俺会員だから大丈夫。行こ」



大人の雰囲気が漂うバーのカウンターに二人並んで腰掛けた。



「二階堂様、いらっしゃいませ」



顔パスなあたり、常連のようだ。


確かにこのホテルに泊まっているのだからよく来ていても不思議ではない。


店内は柔らかな照明とバーテンダーがシェイカーを振る音、そして小さく流れる洋楽のオルゴール調のBGMがとても居心地が良い。



「ここにはいつも来るんですか?」


「んー……たまに?かな」


「へぇ……凄い。やっぱり大人ですね」


「そんなことないよ。……バーは初めて?」


「はい。初めてです」



特別仲が良い友達は愛美くらいのため、愛美の行動範囲内しか基本移動しないのだ。愛美はお酒がそこまで得意ではない。だからバーなんて、来たことはない。


代わりに弱めのカクテルを注文してくれた和音に、由麻はお礼を述べて黙り込む。


大人の雰囲気に、呑まれそうな気がした。


受け取ったファジーネーブルを一口飲んで、少しだけ落ち着いたような気もする。



「お仕事は順調ですか?」


「うん。そこそこね。日本語での診察が久々すぎて慣れないけど」


「ずっと英語だったわけだから仕方ないですよ」



二日前から二階堂総合病院で再びドクターとして働き始めた和音。


まだ手術は執刀していないらしいものの、医者として忙しい毎日を送っているようだ。

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