本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜


「……あちらです。ご案内しますよ」


「え、本当ですか?」


「はい。急ぐ予定も無いので」



思っていたよりも早く面会が終了したため、特に予定も無かった由麻。


なんだか愛美に似ているその人を放っておくことができなくて。


彼の横に並び、外科病棟へ歩き出した。


道だけを教えても良かったものの、憶測だが先程の様子を見ていると彼はかなりの方向音痴と見た。


おそらく連れて行かない限り永遠に辿り着けないだろうと思ったのだった。



「すみません。昔から極度の方向音痴でして。お恥ずかしいです」



歩きながら、彼は恐縮しきりだった。


おそらくこんなことがしょっちゅうあるのだろう。


そのせいで大分苦労してきたんだろうな、と容易く想像できた。



「お気になさらず。……今日はお見舞いですか?」


「はい。妹が事故に遭ってしまったと連絡を受けたもので」


「そうだったんですね。……お怪我の具合は悪いんですか?」



不躾な質問だが、愛美と重なって見えてしまった。


しかしそんな由麻に、彼は柔らかく笑う。



「骨折くらいで済んだらしいです。命に別状無いのが不幸中の幸いですね」


「そうでしたか。早く回復されると良いですね」



言いながら、愛美と同じだと思って首を傾げた。


そして外科病棟のエレベーターに乗り込んだ二人は、部屋番号を確認してお互い驚いた。



「え?愛美のお兄さんだったんですか?」



今から行く病室は、愛美の部屋だと言う。


そう言えば歳の離れた兄がいると、ずっと昔に愛美から聞いていたような気もした。

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