本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
7
数時間後。
自宅でシャワーに入って着替えて、メイクをし直した由麻は愛美の病室へ向かっていた。
何も予定が無ければ愛美の病室に行く予定だったため、そこで待ち合わせにしたのだ。
「由麻!」
「愛美、おはよう」
「由麻ちゃん。早かったね」
「和音さんこそ」
「これからお兄ちゃんとデートなんだって?」
「うん。そうなの」
先に来ていた和音から聞いたらしい愛美は、ニヤニヤしながら由麻と和音を見比べる。
「あ、私ね。来週退院することになったの!」
「え!良かった!おめでとう!」
「ありがとう。やっと大学にも復帰できるし一安心だよ」
「忙しくなるね」
「うん」
こうやって毎日のように愛美とゆっくり会話もできなくなりそうだ。
喜ばしいことなのに、一度に愛美も和音も忙しくなることを考えるとなんとも寂しさが生まれるもので。
「じゃあ今のうちに愛美と沢山喋っておかないとだね」
「えぇ、ダメだよ。そんな可愛いこと言ってるとお兄ちゃんがやきもち焼くから」
「えぇ?」
和音視線を辿って隣に視線を移すと、何とも不満気なお顔が。
「和音さん?」
「……由麻ちゃんが愛美に取られる」
「いや、どちらかって言うとお兄ちゃんが私から由麻を取って行ったんだけど」
「んだと?」
「だってそうじゃん。元々私の親友ですー」
「今は俺の婚約者ですー」
「私は由麻がこーんな小さかった頃からずっと知ってますー」
「くっ……」
「……何でそんな負けたみたいな反応するんですか……」
愛美と和音は、そのままどちらが由麻を大切に思っているかの口喧嘩を始めてしまって。
由麻はもはや置き去りをくらったかのよう。
仕方無しに換気も兼ねて個室の窓を少し開けて外を眺めた。