本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
丁度和音とお見合いした庭園が見える。
少し向こうには都心の眺望も見ることができて、髪を揺らす風が気持ち良い。
しばらくそのまま外を見つめていると肩をポンと叩かれて、後ろを振り向いた。
「ごめん由麻ちゃん。夢中になってた」
申し訳なさそうに頭を掻く和音に、由麻は微笑みながら首を横に振った。
「そろそろ行こうか」
「でも、どこに?」
「うん。ちょっと行きたいところがあって」
含みを持たせた言い方に首を傾げたものの、愛美に見送られながら和音と病室を出て外に向かった。
「どこに行くんですか?」
エントランスを抜けて外に出ると、由麻は和音にもう一度聞いた。
「うんとね、……あれ、見える?」
「……え?」
和音が指差した先には、一つのレジデンス。
実はあのレジデンスは隣の駅が最寄りなのだが、周りに高い建物が無いからかその大きさのためか、二つほど離れた駅からでも見ることができる。
由麻も知っている超高級レジデンス。
「……あのレジデンスですか?」
「そう。これから内見しようと思ってるんだ」
「……え!?」
内見、と言うとやはりあの内見だろうか。
確かに引越し先を探しているとは言っていた。
しかし既に内見の予定まで組んでいたとは。
しかもそれがあのマンションだなんて。
ここからでも近くに見えるそこは、電車で隣の駅に行きそこから歩いて十分ほどの距離にあった。
病院から見るのと、実際にレジデンスの真下から見上げるのでは全然大きさが違う。
タワーマンションに比べると低いけれど、この辺りは戸建てが多いから目立つ。何よりも横に広い。
噂に聞いた話だと一つのフロアに一部屋しか無いらしい。
中がどんな風になっているのか想像も付かなくて、見上げながら言葉を失っていた。