本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「今配置している家具や家電は入居の際にそのままお使いいただいても構いませんし、お気に召さなければお好きなものを別途ご用意いただいても構いません。その際はこちらの家具家電は撤去いたしますのでご安心ください」
コンシェルジュの言葉に大きく頷く和音と、あまりの豪華さに言葉を失う由麻。
「こちらの窓からは先程お部屋の外からご覧いただいたのと同じ景色が一望できます」
「へぇ……素敵ですね」
これなら他の建物とは比べ物にならないほど高いから窓の外からのプライバシーも守られる。
採光も十分すぎるくらいだ。
「こちらの物件は今いらっしゃいますリビングダイニング、その他に四部屋ございましてその内二部屋がベッドルーム、さらにゲストルームが一部屋ございます。その奥にはシアタールームも。バストイレは各二つずつ完備しており、キッチン横にはパントリー、ベッドルームと洗面スペースの間にはウォークインのクローゼットもございます」
由麻も、世間一般ではお金持ちの部類に入る方だ。
都心に一軒家を持つ両親、代々続く家業。ありがたいこに今まで生活に困ったことはない。
それなのにどうだろう。ここにいると、今までの生活は実は平凡そのものだったのではないかと錯覚してしまうほどのもの。
全てが豪華で、全てが贅沢で。
思わず和音の袖をクイっと掴む。
「ん?どうしたの?」
「なんか……凄すぎて、びっくりしちゃって」
「そうだね。俺もびっくり」
へらりと笑った和音は、そう言いつつも何食わぬ顔で即契約をしていた。
と言うのも、この辺りは再開発が進み始めていて、ここのようなレジデンスは富裕層に人気ですぐに売り切れてしまうらしい。
実際この部屋も似たような人が数人候補に入れているらしく、条件にも合致しているため即決したのだった。
同棲するしないに関わらず、由麻と住むならここが良いかなと数日考えていた和音にとっては悩む時間すらも惜しかった。