本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
レジデンスを契約してから数日後、二人はレストランで昼食を食べた後に茅へ向かっていた。
一応結婚前のため、両親に同棲の許可をもらいに来た二人。
予め由麻から母親に連絡したところ、後日時間を合わせての予定が休憩時間でよければ今日時間を作ると言ってくれたため、急いで向かった。
「二階堂さん、いらっしゃい」
「こんにちは。先日は急なご連絡、大変失礼致しました。本日もこのように突然でしたのにお時間いただいて、本当にありがとうございます」
「そんな畏まらなくても大丈夫ですよ。さ、奥の休憩室でもいいかしら?」
「はい。失礼します」
促されるままに厨房の横を通り休憩室の中に入る。
部屋の中の椅子に並んで腰掛けた。
「少し待っていてね」
そう言われ、二人でじっと待っていると一分ほどで母親が父親を連れてきて。
「それで、話とは?」
向かいに腰掛けて、話し合いが始まった。
お互い仕事で忙しくなるためなかなか会えなくなること。
結婚前ではあるが、一緒に住みたいということ。
同棲するしないに関わらず、結婚した後はレジデンスに住みたいから契約したこと。
和音は予め考えていたのか、するすると言葉を連ねて両親にプレゼンしていく。
両親は和音の話に相槌を打ちながら真剣に聞いていて。
「わかりました。娘のこと、よろしくお願いします」
和音にそう頭を下げた両親を見て由麻は拍子抜けした。
「え、いいの?」
「由麻がそう決めたなら、否定するつもりは無いさ」
「……ありがとう」
いつも師としての顔ばかり見ていたため、久し振りに見た"父親"の顔。
反対されなかったことと、許可をもらえたことにホッとした様子の和音。
二人で顔を見合わせて、喜びを噛み締めた。