本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
とんとん拍子に話が進んだため由麻の引っ越し準備が追いつかず、先に和音が入居して後から由麻が引っ越しすることになった。
和音が入居して二週間。
今日は由麻の引っ越しの日だ。
「これで全部?」
「はい。後は細かいものなので暇な時に適当に取りに行きます。実家近いですし」
「そうだね」
実家もここから電車で茅の最寄りを挟んださらに一つ向こうの駅。帰ろうと思えばすぐに帰ることができる距離だから、必要なものを徐々に揃えればいい。
大きなキャリーケースと段ボール二つを持って、由麻はマンションの1001号室に入居した。
キャッシュで購入したらしい部屋に入ると、家具は元々設置してあったものはテーブルなどの一部はそのままに、ソファやベッドなどは全て和音が手配した新品に変わっていた。
「おいで、由麻ちゃん」
荷解きと片付けが一段落したところで手招きされて、由麻はおずおずと和音の元へ。
新調したばかりの革張りソファに座るように促され、そっと腰を下ろした。
するとすぐに和音の腕の中に包まれた。
「はー……やっと一緒に暮らせる」
「……すみません。遅くなってしまって」
抱き締められたまま謝ると、和音は静かにそれを制する。
「ううん。由麻ちゃんは悪くないから。……でもやっぱりちょっと寂しかったから、充電させて」
本心はやはり寂しかったようで、しばらくそのまま閉じ込めるように抱き締めた。
この二週間、やはりお互い仕事が忙しく全く予定が合わなかった。
愛美の退院の日も和音はお休みだったものの由麻は仕事だったため病院には行けず、由麻は和音どころか愛美とも会えていない。二人が顔を合わせるのですら二週間振りだった。