本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「由麻さん。良い子だね。愛美の友達って初めて聞いたかも」
「そう?幼稚舎からずっと一緒の子だよ?」
「そうなの?どこの家の子?」
「駅前にある【茅】って言う和菓子屋さんの娘。知らない?」
言われて、記憶の中から駅前に並ぶテナントを探す。
「あぁ!あの苺大福が絶品の!」
記憶から引き出した和菓子店は、昔から父親がよく二人のために苺大福を買ってきていたお店だった。
「そうそう。お父さんがよく買ってきてくれてたお店。お兄ちゃんも昔から好きだよね」
「甘さがクドくなくて美味しいんだよ。……そうか。あの家の子か」
和音は嬉しそうに微笑む。それを見て、愛美はニヤリと笑った。
「……由麻のこと、気に入った?」
「え?」
「お兄ちゃんのそんな顔、初めて見たよ」
「どんな顔?」
「恋に落ちた、みたいな顔」
揶揄うような言葉に、和音は一瞬きょとんとした後すぐに焦ったように愛美を睨むように見た。
「なっ……何言ってんだよ」
「えー?だって珍しいじゃん。お兄ちゃんが女の人のこと褒めるなんて」
「ただの世間話だろ」
「そうかなあ?」
ニヤニヤとする愛美を横目に、和音はからかわれた恥ずかしさに少しだけ頬を赤く染めながら視線を逸らした。
アメリカでは仕事に邁進してきた和音。
この歳で、五年も向こうにいて浮いた話は一切無かった。
そもそも日本にいた時も勉強に専念していたため、あまり恋愛らしい恋愛はしてこなかったかもしれない。
誰かと付き合ったとしても、すぐに極度の方向音痴がバレて振られてしまうのだ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「由麻、今フリーだよ」
「だからお前はっ」
そんなお節介を焼きたくなるほどに、和音の反応はわかりやすいものだった。
二人がくっついてくれれば嬉しいなあ。と、愛美は一人思うのだった。