死体写真
☆☆☆

加菜子の母親の様子がおかしくなったのは、間違いなくあのメールのせいだろう。


そうとしか考えられなかった。


加菜子を守ろうとするこちらに対して、呪いのメールはあらゆる手段を使ってくるらしい。


和のときもきっとそうして自殺を実行させたのだろう。


私達はパジャマに素足という姿のままで近くの公園にきていた。


このままではどこにも行けないし、加菜子の家に戻ることもできない。


頼れる相手は裕之だけだった。


「一体なにがあったんだよ?」


大きな紙袋を持った裕之がやってきたとき、心底泣きそうになってしまった。


袋の中には女性ものの着替えと、サンダルが入っている。


あとは朝ごはんにパンとお茶を買ってきてくれたみたいだ。


「わからないの。急にお母さんが変になって……」


公園のトイレで着替えを済ませて、お茶を一口飲んだところでようやく加菜子が口を開いた。


少しは落ち着いた様子だけれど、その声は震えている。


私だってまだ気持ちが落ち着かない状態だった。


「それで外に出るしかなくなったのか」


事情を飲み込んで裕之が険しい表情を浮かべる。


まだ早い時間であるけれど、裕之はすでに制服姿だった。


ここへ来るのに服装を選んではいられなかったのだろう。
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