死体写真
「加菜子?」


右手を伸ばしてその手をもう1度握りしめようとしたのだけれど、それから逃れるように突然加菜子は走り始めたのだ。


咄嗟のことで動くのが一瞬遅れてしまった。


加菜子はその間にあっという間に前方にみえていた橋の欄干まで移動していたのだ。


「おい、なにしてんだ!」


今にも手すりを乗り越えて川へ飛び込んでしまいそうな加菜子に気が付き、裕之が駆け出す。


「助けて」


加菜子の絞り出すような声が聞こえてきた次の瞬間、その体は川へと落下していた。


「加菜子!!」


叫び声を上げて手すりにすがりつき、川を覗き込む。


最近は晴れ間が続いていたというのに川の水川は多く、流れも早い。


その中に加菜子の体が沈んでいくのがみえた。


「嘘だろっ」


裕之とともに河川敷へ降りたときにはすでに加菜子の姿はどこにも見えなくなっていたのだった。
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