死体写真
裕之の腕を両手で掴んで叫ぶように言う。


しかし裕之は左右に首を振る。


まるですべてを諦めているかのような態度に胸が締め付けられる。


「呪いを解くためには、この写真と同じ死体を作らないといけない。そんなことできないだろ」


諭すような声でそう言われてはなにも言い返すことができなくなってしまった。


裕之を助けるために、他の誰かを犠牲にする。


そんな悪魔の所業が自分にできるとはとても思えなかった。


私は裕之を掴んでいた手のちからをそっと緩めた。


強く握りしめすぎていたようで、制服にシワがついてしまっていた。


「タイムリミットは?」


「明日の朝まで」


このぬくもりが明日の朝にはなくなってしまうなんて。


この優しさが、もうすぐ消えてしまうなんて。


考えるだけで胸が張り裂けてしまいそうだ。


どれだけ叫んでも叫びたりない。


どうして神様は私達にこんなにも理不尽な仕打ちをするのだろうかと、神を呪った。


「今日はずっと一緒にいて」


裕之の胸に自分の頬を押し付けて、そう呟いたのだった。

< 133 / 155 >

この作品をシェア

pagetop