死体写真
そこにはられていたはずのネームは剥がされていたが、つい最近まではられていたようで木の色が新しい。


「たぶん、ここがクリちゃんの下駄履だったんだろうな」


和の言葉に私は静に頷いた。


先月までここを使っていた少女はもうこの世にはいない。


そう思うと胸に隙間風が吹いていくようだった。


それから私達は靴下で校内に入り込み、校舎地図を確認して2階へと向かった。


2年3組の教室は2階の一番端にあり、すぐに見つけることができた。


閉められているドアの前に立ち、それぞれに目を見交わせる。


これは立派な不法侵入だし、おかしいことにバレたらなんの収穫もなく追い出されることになってしまう。


下手なことは絶対にできない。


緊張で背中に汗が流れていった。


和が右手を伸ばしてノックしようとしたそのタイミングで、ドアが開いた。


教室から出ようとした男子生徒が驚いたように目を丸くして和を見つめる。


まずい!


咄嗟に後ずさりをしてしまう。


教室に生徒が残っていれば、その子たちからクリちゃんについて聞き出すつもりでいた。


ちゃんと入校許可をとり、小学校時代にクリちゃんと仲が良かった友達で、今日になってやっと訃報を知ったのだと、説明する予定だった。
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