死体写真
「あれほど死ぬことを怖がっていた子が、自分から死ぬはずがないわよ」


女性は写真の中のアキナちゃんへ視線を向ける。


アキナちゃんはそこでずっと変わらない笑顔を浮かべている。


「死ぬのを怖がっていたってことは、なにか死ぬようなことがあったってことか?」


和が普段よりも少しだけ柔らかな声色で訊ねた。


女性は一瞬怪訝そうな目を和へ向けたが、すぐに気を取り直したように話し始めた。


「それが、よくわからないの。『死ぬわけがない。そんなに怖がらなくていい』って言っても、あの子全然聞かなくて。『無理やり自殺させられるんだ』とかいい出して、もうなんのことだかわけがわからなくて……」


女性は深い溜め息を吐き出すが、私達は目を見交わせた。


間違いない。


アキナちゃんには呪いのメールが届いていた。


そしてそれが呪いのメールであると、アキナちゃん自身が知っていたのだ。


だから『無理やり自殺させられる』なんて不可解な日本語が出てきたのだ。


そしてきっと、24時間以内に言葉どおり、自殺させられた……。


「自殺なんて考えなければいいのよと諭したけれど、アキナは『違うんだ。そうじゃないんだ』ってずっと泣いてて、どうしようもないからその日は朝までずっと一緒にいたのよ。それでようやく落ち着いてきて、学校へ行ったの。とりあえずこれで大丈夫だろうと思ったのよ。


アキナが帰ってきたらまたしっかり話し合おうって。だから、とにかくアキナが元気になるように夕飯にはアキナの好物ばかりを作ったの。カレーにハンバーグにエビフライ。あの子ったら、高校生にもなってお子様ランチみたいな食べ物が好きだったから」


アキナちゃんのことを思い出しているのか、女性の顔は幸せそうだった。

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