死体写真
説明している間に裕之は和のスマホを奪い取っていた。


「なにすんだよ!」


和が取り返す暇もなく、なにか操作をしてしまった。


画面からはメールが削除されて、跡形もなく消えている。


「なにするの! メールに返信することができれば、死なずにすむかもしれなかったのに!」


加菜子が叫ぶ。


「メールに返信? たったそれだけで助かるような呪い、全然怖くないだろ?」


裕之が加菜子をにらみつける。


そのとき、違和感が胸を刺激した。


裕之はどうしてこうも呪いのメールの存在を否定するんだろう。


信じられない出来事だとしても、噂を知っていたのは裕之のはずなのに。


「裕之、もしかして呪いのメールについてなにか知ってるんじゃないの?」


聞くと、裕之は明らかな狼狽を見せた。


視線を外して空中へ泳がせ、下唇をなめる。


どう言い訳をしようかと考えているようにみえた。


「なにか知っているなら教えてよ! なんでもいいから!」


裕之の腕を掴んで懇願すると、眉間にシワを寄せて小さくため息を吐き出した。


「……死んだんだよ。俺の知り合いも」


その言葉に絶句してしまう。
< 86 / 155 >

この作品をシェア

pagetop