虹色のバラが咲く場所は

120話 生きてみたい

ー昼休みー
僕たちはオープンスペースで宮本さんから
理由を聞く。
「前に雪希くんの番組を見たんだ」
見てくれたことに驚くが、なにが関係して
いるのかわからない。

「雪希くん、言ってたでしょ?
性別なんてただの二択。
その二択でその人の生き方を決めることは
絶対にできないって。」
「うん」
「ただの二択、そのたった二択に振り回されたままでいいのかなって。
やりたいことを
我慢したままで私にメリットあるの
かなって。だから思い切って母さんに
言ったんだ。もう俺を演じるのは疲れた、
私は私なりに生きてみたいって。」
「そし、たら?」
珍しく催促したのは辺里くん、
宮本さんは苦笑して
「予想通り、母さんは阿鼻叫喚。
今まで俺でいることで安定していた精神が
崩れたからね。
竜也は私なんて言わない、私の子供は
男の子だって肩を掴んで泣かれたよ。
でも折れなかったよ。
ここで折れたら何も変わらないから。」 

一拍置いて
「私は男の子じゃないよ。
着たい服を我慢したくない、
メイクだって、ネイルだってしてみたい。
お願い、女の子にならせてって。
母さんは絶望したように床に座り込んで、
懇願されたよ。そのままで生きて欲しい、
変わらないで。
泣いてたと思ったら
あなたが変わってしまうと母さんはおかしくなるって笑ってた。
私は母さんの精神安定剤じゃないって
はっきり言った。
メロドラマじゃないけど
親戚の目と自分の子供、どっちが大事なの
って聞いたよ。そしたらわからないって
返ってきた。予想はしてたけど悲しかった。
そして母さんは部屋に閉じこもった。
どこかでわかってくれるって信じて我慢して男の子で過ごすことを続けた。
夕食の時とかも催促せずに待って
3日前に言われた。
竜のように常に上を目指して生きて欲しいから竜也って名付けたって。
竜は雲を突き抜けて生きるもの。
なのに親戚や母さんという雲に覆われて
ずっと生きてきたんだね。
名付けの由来に背いた生き方をさせて
ごめん。強くなるから。
今はまだ不安定でも頑張るからって。
それから母さんはその日のうちに親戚全員
と縁を切ったよ」
「「え!?」」

2人して思い切った方向に驚くが、
宮本さんは遠い目をしていた。
(宮本さん自身もその方向に行くとは
思わなかっただろうな)
「今まで耐えてた分の反動でポルテージが
おかしくなったんだと思う。諸悪の根源は
絶つに限るって笑顔で言ったよ。
父さんは私を産む少し前に病気で
他界しててそのおかげでって言ったら
罰当たりだけど父方の親戚とはすぐに
縁切りできたよ。まぁその直後に父方の親戚が母さんのところに押し寄せてきて
色々喚いてたけど先程、姻族関係終了届を
提出してきました。いわばあなた方は
他人になりました。これ以上喚くのなら
警察に通報しますが、ってスマホを見せたら文句言いながら帰っていったよ。」

立つのも疲れたから途中から床に座って
話を進める。
辺くんくんは胡座、僕は正座、宮本さんは
アヒル座り、
(こうしてみると、
本当に本当に僕たちバラバラだな)
「父方?母方の親戚はどうなったの?」
「焦らないで雪希くん。
続きがまだあるから。
昨日、母さんに母方の祖母から電話が
かかってきたんだ。隣で聞いてたんだけど、私の顔に泥を塗ったとか、男を産めなかったお前のせいだとか散々だった。でも、
なら私はもう必要ないね、私も娘の
成長に悪影響しか与えない祖父母はいらないの。WIN-WINでしょ?それじゃ、て
ガチャ切り。それはもう清々しい笑顔で」
「「へぇー」」

タイミングよく予鈴がなったから、
立ち上がりズボンを叩いたりして、教室に
向かう。
そして、週末。
< 120 / 267 >

この作品をシェア

pagetop