虹色のバラが咲く場所は

187話 辛いこと

「それにしても災難だったね」 
「うん、でも安心半分、残念半分かな」 
電話の相手、翔との電話は久しぶり。
「今ってどこにいるの?」 
「今?寮にいるけど」
(なら安心。)

「そっち忙しい?」
「わかりきってること聞くね。
忙しいよ。あ、
今度全国ツアーやるんだ」
翔の声は弾んでいた。日常の疲れを
感じさせないほど。

「あのさ、翔」
「ん?」
「アイドルしてて、辛いことって
あった?」
翔は間をおかずに
「あった。数え切れないほど、」
「え?」
(あっても両の手で数え切れるくらいだと勝手に思ってた)
「例えば?」
「例えば、・・・そうだね、
今はチケット販売すれば即完売だけど
結構余ったこと、かな。
はじめての単独ライブで受け行きが
伸びないことを想定した販売だったけど
予想をかなり下回ったことがあって。
会場の空席がステージからもよく
わかるくらい。」
「やっぱり・・・ショック、だった?」

「もちろん。でも少数でも期待してくれたことは確かだからね。
手は抜かなかった」
「他、には」
「やっぱり、比較、かな」
私の心臓はドキリと音が強くなったのを
感じた。
「比較?」
「同期のこのグループの方が好き、とかこの人たちと比べたらまだまだとか。
どのグループが好きとか完全に好みなのにそういくのを聞くとちょっと
イラッとしたよ。
わざわざ声をあげていうこと?て」

(そういえば、私たちも言われたな。
でも雪希が)
「その時、涼太に言われたんだ。
気にするほど余裕あるんですか?て」
「私も雪希に似たようなこと
言われたよ。」
「やっぱり、そういうポジション的な
人は必要だよね」

「今では知らない人はいないけど
最初はネットでエゴサをしても
STEPの文字がないことなんて  
ザラだっし。
見つけたとしても
すぐに終わるってコメントがほとんど
だったんだよ」
「ほんとに?!」
声は笑っていたが信じられない

「すぐに終わる、時間の無駄、
解散まであと○日とか。
そこまで第三者から見て本気度が見られ
なかったのかなって」
「それでも、頑張れた理由は?」
「半分はビックになって見返すって
いうのと、あとは逃げるのは 
ダサいっていうプライドだけど
それが原動力だった。
どうしたの?急に」

「なんとなく。
やっぱり行き詰まるんだなって」
「そりゃ、
ずっと進むなんてできないよ。アイドルでも1人の人間だからね。
それでも這い上がってきたのは事実。。綺麗な、純粋な気持ちだけで
続けられないよ。なんでもね」
「翔、」
物思いに耽るような声。
「どう!今のかっこよくなかった!?」
(それがなかったら完璧だったのに)

「ごめん、疲れてる時に」
「全然、寧ろもっと聞いてほしいし
愚痴でもなんでも聞くからさ」
「ありがとう」
「え、ありがとうって、明日は」
長くなりそうだから切った。

明日は憧れを追い越したその先への
打ち合わせと収録。
STEPに追いつけるようにまだまだ
頑張らないと
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