虹色のバラが咲く場所は

202話 父親

「おかえりたまきさん、かよさん」
「おかえりなさい、お邪魔してます」
いるはずもないと思っていた俺がここにいて2人は心底びっくりしていた。

「いらっしゃい、蓮くん。
言ってくれれば迎えに行ったのに」
にこりと笑うかよさんの言葉に適当に
返事をして、本題に入らせてもらう。

「すみませんが3日間だけここに
いさせてくれますか?」
「それは構わないけどどうして?
茉里に聞いても曖昧にしか話して
くれなくて」
「それは・・・諸事情で。
聞かないでくれるとありがたいの
ですが」
「わかったわ、」
とかよさんと話が終わり後ろにいる
たまきさんを見る。

「たまきさんもすみません。
こんな急に」
「あ、いや」
俺の態度のせいかたまきさんには
まごついている。

「たまきさん、去年のライブ、
見てくれていたみたいですね。
ありがとうございます」
「あ、ううん。すごかったよ。
頑張っているのね」
少し表情を綻ばせた。
言っているのは本音だとわかっている。
でも素直に受け取れないのはまだ
根に持ってるからだと思う。
「ありがとうございます。
少し部屋にいってます」

久しぶりの自分の部屋。
ベットにダイブして、顔を上げ見渡す。
(柱に掛かっている時計、机、
壁に掛かってある初等部の時の賞状。
何も変わってないのにすごく懐かしい
気がする)

目が覚めると日はすっかり落ちて
暗くなっていた。
(こっちについたのは4時ごろなのに。
自分で思っているより、色々と
疲れてたのかな)

「お兄ちゃーん、ごはーん!」
「はーい、」
一階から茉里が俺を呼ぶ。

降りていくともうご飯味噌汁、おかずと
添えられていた。
「いただきます」
俺の使っていた箸はいつのまにか新しくなっていた。

おかずの唐揚げを食べてご飯を
咀嚼する。
(向こうでも何回か唐揚げは出たな。
どっちも美味しいけど懐かし気がする)

「美味しいです」
「そう、よかったわ」
(たまきさん、本当に変わったよね。
俺に向けるのは冷たい目だけだったのに
今は優しさも含まれている気がする)

「ごちそうさまでした」
片付けを手伝おうとしたら
休んででいいと断られた。

「ただいまー」
玄関で茉里と父さんの会話が聞こえる
「おかえり、お父さん」
「ただいま、茉里。
誰か来てるの?一足多いけど」
「お兄ちゃん、
3日だけ泊まるんだって」
「部屋か?」
「うん、部屋にいるはず」
部屋に来ると思ったが来ない。
(緊張して損した)

お風呂に入って宿題をして
挑戦状について考えていると
部屋の扉がノックされた。
「蓮、少しいいか?」
「どうぞ」

父さんはベットに腰を下ろす。
ーアイドルをやめろー
そう言われたのはもう昔のこと。
俺はもう揺らがない
「Rainbow Rose」
「なに、というかよく知ってるね。
興味なさそうだったのに」

「人気なんだな」
「まあね」
何が言いたいのかわからない。
「楽しいか?」
「うん、
もちろん楽しいばかりじゃないけど
充実してる」
「ならいい。頑張ってるんだな。
これからも励みなさい」
腰を上げて部屋を出る

「・・・うん」
(今更父親面しないで)
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