虹色のバラが咲く場所は
218話 アスレチック
バスで移動して着いたアスレチック場。
夏休みだから人が多い。
少し離れた場所にある売店で
ウィンドブレーカーを買う。
更衣室で着替えて、鍵のついた
ネックレスを首から下げて
ウィンドブレーカーの中にしまう。
未就学児エリア、小学生エリア、
中学生エリア、高校生エリア、
大人エリアと分けられているが、
中学生だから高校生エリアができない
小学生エリアができないということは
なくあくまで目安でらしい。
どの設備にもネットが引いてあり、
落ちても平気だ。
夏休みで人が多い。
(みんな、プールとかだと思ってたから
意外だな)
上から垂らされたロープを握り
足の力で壁を登るもの。
登り棒、ロープウォーク、網潜り、
様々な分野がある。
「全種類、制覇しようよ」
「私もそう思ってた。
珍しく紗南と気があうね」
未就学児エリアは楽々に制覇。
小学生エリアも特に躓くことなく制覇。
中学生エリアのボルダリングは
タイムを図ることができた。
同時にボタンを押して壁を登る。
壁の高さは6m。
最初は石の数も多く楽だったがどんどん
数が少なくなる。
手をかける場所と足場が限られて、
少しきついがなんとかクリア。
「私の方が早かったね」
「こう言う時の頭の回転は紗南の方が
早いよね。足は私の方が早いけど」
「もう一度勝負する?」
「やる。次はわたしが勝つ」
さまざまなアスレチックをクリアして
協力型ではどちらが先に行くかで軽く
揉めたりしたが大人エリアまで制覇した頃には夕方になっていた。
(スタッフさんの存在忘れてたな)
バスで事務所近くまで乗り、
バス停で紗南と別れる。
「ねぇ、今度は年末にカラオケ
行こうよ」
「気が向いたらね」
「なんか今日の舞いつもより辛辣
じゃない?」
側から見たら冷たいこれも私たちに
とっては通常運転。
私が中等部の時に使っていた電車の駅
まで迎えに来てもらっているらしい。
「思ってたイメージと違うな」
「え?」
帰り道、撮っていないカメラを持っているスタッフさんの呟きに聞き返す。
「違うってなにがですか?」
「あ、えっと気を悪くしたら
すみません。テレビとか収録で見る
舞ちゃんじゃなくて、等身大で。
なんか新鮮だなと」
「そうですか?」
まだギリギリ夕方といえる時間帯。
街頭が数回点滅して明るくなる。
深くは聞かずに事務所に戻る。
夜は類がカレーを作ってくれていて
私が準備することなく食卓が
できていた。
せっかくだからと色々とスパイスを調合して作ったというカレー。
ルーとは違う匂いに食欲がそそられる。
夕食後、後片付けをしてお風呂に入り
布団を移動させる。
3つ並べられた布団の真ん中、雪希の
布団にうつ伏せになる。
類と蓮は自分の布団に、雪希は少し
詰めてもらい類の布団に座る。
さっきスタッフさんに言われたことを
自分なりの考えで伝える。
「私は友達の前で演技したくない。
たとえカメラが回っていて、
それが全国に流れても」
「誰にだって隠したいことは
ある。言いたくないことが。
全てを知らないと友達、親友になれない
なんてことはないと思いたい」
「自分に都合がいいのは分かってる。
演技はしない、でも隠し事はある。
それでも紗南が拒絶しない限り私は
友達でいたい」
「人間」
類の呟きに耳を傾ける
「誰だって都合がいいようにしようと
考えて、行動しているんだよ。
楽な方がいいっていう人がほとんどだと
思う。俺もだし。
難しく考えなくていいんだよ、舞。
なにも考えないで流れに身を任せるのも一つだよ」
「そっか、ありがとう類」