虹色のバラが咲く場所は
221話 記憶
「陸さん!」
「舞」
膝に手をついて上がった息を整える。
「気持ちはわかるけどここ
病院だからね」
待合室で私がくるのを待ってくれていた
日向さんと陸さん。
「すみません」
「他の奴らは後日見舞いにくるって」
STEPの2人に挟まれて病室に移動する。
入院病棟の3階にある談話室。
そこからは速報で翔が公演中に
倒れたと報道されていた。
(誰かニュースでも見てたら知るのかな)
病室の名札を確認する。
個室で白で統一された部屋のベットに
翔は眠っていた。
他の色がなく少しゾッとしてしまった。
顔は白かったが息をしていることに
安心する。
そばにあった椅子に腰かける。
(大丈夫、生きてる)
もっと内心焦るかと思ってたけど
自分でも引くほど冷静だった。
「医者からは疲れだろうってさ」
「命に別状はないから大丈夫だよ」
「そう、ですか」
陸さんと日向さんは気を利かせてか
病室に2人きりにしてくれた。
この光景、思い出した。
あの時の霊安室に似てるんだ。
(本能的に思い出さないように
してたのかな)
ー回想ー
暗い部屋で顔に白い布が被せてあった。
「父さん!母さん!」
先生の話を一緒に聞いている時ずっと 無言だったお兄ちゃんはその場で
泣き崩れた。
シーツから覗く手足はとても白く
触ると冷たくて私の両手では少しも
動かせないほどとても重かった。
その冷たさと重さがもう生きていないという事実を突きつけた、
反応はない。
いつも微笑むお母さんも
抱き上げてくれるお父さんもいない。
私が泣くといつもお兄ちゃんが
そばに来てくれた。
時には背負ってくれた
背中がいつも大きく感じていた。
でも今は背中を丸めて泣いている。
嗚咽をしながら。
私はそんなお兄ちゃんを見て
しっかりしないとと決めた。
心配させないように、
少しでも楽にしてあげよう。
幼い頭で私はそう結論づけた。
ー回想終了ー
お父さん達のことを思い出すと急に
不安になる。
もう姿も朧げでどんな声だったか
思い出せない。
(今まで、忘れてたから。
このままだったらきっと翔のことも)
さっき冷静だったのが嘘みたいに
不安が溢れてくる。
(このまま目を醒さなかったら
どうしよう。本当に私1人になる。
またあの冷たさと重さを経験しないと
いけないの?)
布団から出ている右腕の手を
ゆっくり両手で包む。
(大丈夫、暖かい。
あの時に比べたら全然重くない)
でも不安は消えない。
「置いていかないで、お兄ちゃん」
これが罰なら恨むよ。
お父さん、
今まで忘れてたからってこんな仕打ち。
私の夢、叶わなくなるよ。
お母さん、
共演を見れなくていいの?
面会時間の終わる10分前。
病室を出ると陸さんと日向さんが
病室前の椅子に座り待っていてくれた。
「今日はもう帰ろうか、送ってくよ」
「え、それは」
「気にするな、舞。
何かあったら俺たちが翔に怒られる」
被っていたキャップを私に被せ、
陸さんはマスクをする。
ー帰り道ー
「思ったより報道陣が少なかった」
「まあ病院前だしな」
人の少ないバスの中で
アイドル2人に挟まれるのは
とても緊張する。
(私もアイドルだけど)
「バス停から病院まで結構距離あるけどその距離走ったの?」
「火事場の馬鹿力ってやつですよ。
病院についた途端に疲れました」
家の近くで2人と別れる。
「ありがとうございました」
キャップを返そうとしたら今度でいいと
断られてしまった。
「舞」
膝に手をついて上がった息を整える。
「気持ちはわかるけどここ
病院だからね」
待合室で私がくるのを待ってくれていた
日向さんと陸さん。
「すみません」
「他の奴らは後日見舞いにくるって」
STEPの2人に挟まれて病室に移動する。
入院病棟の3階にある談話室。
そこからは速報で翔が公演中に
倒れたと報道されていた。
(誰かニュースでも見てたら知るのかな)
病室の名札を確認する。
個室で白で統一された部屋のベットに
翔は眠っていた。
他の色がなく少しゾッとしてしまった。
顔は白かったが息をしていることに
安心する。
そばにあった椅子に腰かける。
(大丈夫、生きてる)
もっと内心焦るかと思ってたけど
自分でも引くほど冷静だった。
「医者からは疲れだろうってさ」
「命に別状はないから大丈夫だよ」
「そう、ですか」
陸さんと日向さんは気を利かせてか
病室に2人きりにしてくれた。
この光景、思い出した。
あの時の霊安室に似てるんだ。
(本能的に思い出さないように
してたのかな)
ー回想ー
暗い部屋で顔に白い布が被せてあった。
「父さん!母さん!」
先生の話を一緒に聞いている時ずっと 無言だったお兄ちゃんはその場で
泣き崩れた。
シーツから覗く手足はとても白く
触ると冷たくて私の両手では少しも
動かせないほどとても重かった。
その冷たさと重さがもう生きていないという事実を突きつけた、
反応はない。
いつも微笑むお母さんも
抱き上げてくれるお父さんもいない。
私が泣くといつもお兄ちゃんが
そばに来てくれた。
時には背負ってくれた
背中がいつも大きく感じていた。
でも今は背中を丸めて泣いている。
嗚咽をしながら。
私はそんなお兄ちゃんを見て
しっかりしないとと決めた。
心配させないように、
少しでも楽にしてあげよう。
幼い頭で私はそう結論づけた。
ー回想終了ー
お父さん達のことを思い出すと急に
不安になる。
もう姿も朧げでどんな声だったか
思い出せない。
(今まで、忘れてたから。
このままだったらきっと翔のことも)
さっき冷静だったのが嘘みたいに
不安が溢れてくる。
(このまま目を醒さなかったら
どうしよう。本当に私1人になる。
またあの冷たさと重さを経験しないと
いけないの?)
布団から出ている右腕の手を
ゆっくり両手で包む。
(大丈夫、暖かい。
あの時に比べたら全然重くない)
でも不安は消えない。
「置いていかないで、お兄ちゃん」
これが罰なら恨むよ。
お父さん、
今まで忘れてたからってこんな仕打ち。
私の夢、叶わなくなるよ。
お母さん、
共演を見れなくていいの?
面会時間の終わる10分前。
病室を出ると陸さんと日向さんが
病室前の椅子に座り待っていてくれた。
「今日はもう帰ろうか、送ってくよ」
「え、それは」
「気にするな、舞。
何かあったら俺たちが翔に怒られる」
被っていたキャップを私に被せ、
陸さんはマスクをする。
ー帰り道ー
「思ったより報道陣が少なかった」
「まあ病院前だしな」
人の少ないバスの中で
アイドル2人に挟まれるのは
とても緊張する。
(私もアイドルだけど)
「バス停から病院まで結構距離あるけどその距離走ったの?」
「火事場の馬鹿力ってやつですよ。
病院についた途端に疲れました」
家の近くで2人と別れる。
「ありがとうございました」
キャップを返そうとしたら今度でいいと
断られてしまった。