逆ハーレム戦隊 シャドウファイブ
1 入隊
平和な日曜日の昼下がり、私はのんびりと公園でくつろぎ、親子やカップルを眺めながらサンドイッチをつまみ、読書する。
そこへ、いきなり轟音がまき散らされ、叫び声と、逃げ惑う人であっという間に公園は空っぽになった。
「え? やだ、なに? わ、私も逃げないと」
口にサンドイッチを加え、左手で本を開き、右手でマグボトルを持っていたせいで、何をどうすればよいかパニックをおこし、逃げ遅れる。
「ええーっと、本閉じて、食べちゃって、どこどこ、蓋、蓋!」
そうこうしていると目の前に怪人が現れてしまった。
「キーッーヒィッヒッい! おじょうさん、もちろん人質になるわよねえ」
「ひっ!」
この怪人は、全身がゼリーを塗ったようにぬらぬらとし、しかも気味の悪い黄土色で名前を「スライミー怪人」と言う。最近現れて、人々や動物たちにそのぬらぬらした取れにくいゼリーを塗り付け、身動きできないようにし、やがて怪人たちの本拠地であると言う、怪人パークに連れて行こうとするのだ。しかし、町の平和を守ってくれるシャドウファイブのおかげで、まだ被害は出ていない。
「た、助けて! シャドウファイブ!」
私は声の限り叫ぶ。
「ちょ、おまっ、大きい声出すなって」
スライミー怪人は慌てて私の口をぬらぬらした手でふさぐ。
「ううっ、むっうううっ」
気持ち悪さと息苦しさでもがいていると、そこへ颯爽とリーダーのレッドシャドウが現れる。全身を真っ赤なぴったりとした衣装に腰には大きな金色の銃を差していて、テンガロンハットとウエスタンブーツを履いている。顔はもちろん覆われているので分からないが、見るからに長身で筋肉質でしかもリーダであれば恰好悪いはずはない。私はかっこいい姿に痺れ、一瞬、怪人の人質だと言うことを忘れる。
「そこまでだ! スライミー怪人!」
「キーッーヒィッい! バカめ、人質が見えないのか?」
「むっ!」
「もがっ、むがっ」
私の事はいいから早くやっつけてと言いたいが無理だった。
レッドと怪人が睨み合っていると、四方から、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクが到着する。
怪人はきょろきょろと5人を見渡し「お前ら、1人に5人って卑怯だろ!」と叫ぶ。
ブルーが静かに答える。
「悪いことする方が悪い」
「……」
冷静なブルーの一言に怪人は押し黙る。その瞬間、ピンクが豊満な身体を揺らし始め、怪人の目を奪う。本当に巨乳で上下に激しく振り子のように揺れている。吹っ飛んでいきそうなおっぱいに私は逆に心配になる。
「あっ!」
ピンクの衣装が破れ、胸から何か飛び出した。
「げっ! やべえっ!」
柔らかそうなふにゃふにゃした水風船のようなものが飛んでいき、その破けた衣装の下には平らな胸と小さくて茶色い硬そうな乳首が見えた。
「!!!」
「!!」
「!」
「お、おまえ、ピンクってさ、普通女だろ! だましやがってええ」
怪人の憤りにピンクも逆切れする。
「お前らの勝手なイメージだろうが!」
ピンクと怪人を見守っていると怪人の手が緩み、その手をバシッと叩き落とし、私を救い出してくれた。
「平気?」
イエローだった。明るい陽気な声にほっとして「はいっ」と答えると「じゃ、ここにいてね」とベンチに座らせてくれた。
人質もいなくなり、スライミー怪人はもはやここまでかと観念しはじめるが、最後にべとべとのゼリーをまき散らし、シャドウファイブの衣装や武器を汚す。
しかし彼らは人数だけの戦隊ではない。
大柄なグリーンが強力なウォッシャー液を噴霧する。途端にゼリーは溶解し始め、そしてまたスライミー怪人も溶けていく。
「グウウーうっ! おのれえ、まだまだ怪人がやってくるからなっ! くそー、ピンク、男か、ヨ……」
跡形もなくなりシャドウファイブは手を高く上げ、5人すべての手を重ねる。
「みんなは1人のために! 1人はみんなのために!」
どこかで聞いたことのある言葉だが、怪人に勝利し、私はほっとして拍手した。するとシャドウファイブが全員一斉にこちらを向き、やってくる。
「あ、ありがとうございました!」
「ん。いいんだ。だがピンクの事を誰にも言わないでもらえるかな」
リーダーのレッドが頼んできた。
「もちろんです!」
さすがに私もピンクが男ですなんてツィートしたりしない。しかしピンクが「でもさー。そんなん口約束じゃん」と心配そうに言いだした。
ブルーも「確かにもうピンクの噂が出てる。バストが不自然だって」と同調している。
「ここまでポロリしたの初めてだよなあ」
イエローも不安げで、グリーンも黙って俯いている。
「あ、あの、大丈夫ですよ。ピンクシャドウはいるだけで、モチベあがる存在ですし、そこまでおっぱい大きくしなくてもいいんじゃないかなーって」
私の言葉に5人はぱっと明るい様子を見せる。表情は見えないけれど。
「そうか、そうだよな。ピンクってさ、そもそも戦わなくてよくないか?」
「そうだよなあー。確かに」
「君、いい事いうねえ。名前は?」
「あ、はい。鈴木桃香 です」
「へえー、桃香ちゃんね。お仕事はなに?」
「前のとこやめて探してるところなんです」
「へえっ! おい、聞いたか?」
シャドウファイブは何やら相談し始める。そろそろ帰ろうかと思い、荷物をまとめていると「待って、待って」とレッドに声を掛けられる。
「あ、はい、なんでしょう」
「相談があるんだ。どうだろう。ピンクになってもらえないか?」
「え??」
「頼む。俺ももうピンクやだ!」
首からピンクのマスクを取ってしまい、その下からは童顔で目の綺麗な青年が出てきた。髪は薄茶色の巻き毛で目の色も薄い茶色で肌も白い。
「桃香ちゃん、戦わなくていいからさ。どうだろう? 求職中だよね。もしメンバーになってくれたら仕事も融通効くよ?」
「え?」
「俺たち5人はみんな商店街で自営業なんだ。こうして怪人が現れたらちょっと店を離れて出てくるのさ」
「いきなり、お店お休みするんですか?」
「いやいや、それは大丈夫、親父やお袋たちがいるからね。大型スーパーもあるしさあ、そこまで仕事の拘束きつくないってことなんだよ」
「は、はあ……」
「気に入った店で働きながらさあ、一緒に始動してくれないかな。その時はボーナス弾むからさ」
「え、ええーっと」
このままでは強引に入隊させられそうだと危惧していると、メンバーが全員マスクを取り自己紹介始めた。
「リーダーのレッドの田中赤斗です。32歳で家はイタ飯屋です」
きりっとした眉に黒目がちで濃い顔のイケメン、少し日焼けをしていて健康的だ。
「ブルーの山本青音。32歳、アンティークショップ」
やっぱり眼鏡かけてた。細おもてに知的な風貌で目つきが鋭い。
「イエローの井上黄雅。同じく32でおもちゃ屋やってる」
明るく気さくな王子様みたいな人だ。艶やかなロン毛で顔立ちはとても優しい。
「グリーンの高橋緑丸、32歳、接骨院経営です」
体格がとても良くてマッチョな人だけどおっとりした雰囲気だ。
「ピンク。もうやめるけど。松本白亜、32、美容院やってる。みんな同級生なんだ」
32歳で恐らく独身で私設でこの町の平和を守っているなんて。少し私は感動していると、ピンクこと松本白亜がマスクを手に渡してきた。
「じゃあ、明日からよろしく。俺は、裏方に回って敵の出方を調査する方に回るよ」
「ああ、そうだな。そういうのないと予測が立たないしな」
もう私は勝手にメンバーの一員に加えられ、逃げることが難しくなってしまった。
「あ、あの。ほんとに戦わなくていいですか?」
「もちろん! みんなで君を守るよ」
タイプの違うイケメン5人に守られて、平和を守る……。ちょっとだけ、やってみようかな。
「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」
「やったあー! 新メンバー、ピンクシャドウの誕生だ! 桃香ちゃん、よろしくね!」
「よろしく」
「頑張ろうね」
みんなに握手を求められ、なんだか自分も盛り上がってしまった。そしていつの間にか手をあげ、6人でポーズを決める。
「みんなは1人のために! 1人はみんなのために!」
そのあと、すぐに新人歓迎会をやろうと、レッドこと、田中赤斗の経営するイタリアンのお店に行き、そのまま夜更けまで宴会となった。
そこへ、いきなり轟音がまき散らされ、叫び声と、逃げ惑う人であっという間に公園は空っぽになった。
「え? やだ、なに? わ、私も逃げないと」
口にサンドイッチを加え、左手で本を開き、右手でマグボトルを持っていたせいで、何をどうすればよいかパニックをおこし、逃げ遅れる。
「ええーっと、本閉じて、食べちゃって、どこどこ、蓋、蓋!」
そうこうしていると目の前に怪人が現れてしまった。
「キーッーヒィッヒッい! おじょうさん、もちろん人質になるわよねえ」
「ひっ!」
この怪人は、全身がゼリーを塗ったようにぬらぬらとし、しかも気味の悪い黄土色で名前を「スライミー怪人」と言う。最近現れて、人々や動物たちにそのぬらぬらした取れにくいゼリーを塗り付け、身動きできないようにし、やがて怪人たちの本拠地であると言う、怪人パークに連れて行こうとするのだ。しかし、町の平和を守ってくれるシャドウファイブのおかげで、まだ被害は出ていない。
「た、助けて! シャドウファイブ!」
私は声の限り叫ぶ。
「ちょ、おまっ、大きい声出すなって」
スライミー怪人は慌てて私の口をぬらぬらした手でふさぐ。
「ううっ、むっうううっ」
気持ち悪さと息苦しさでもがいていると、そこへ颯爽とリーダーのレッドシャドウが現れる。全身を真っ赤なぴったりとした衣装に腰には大きな金色の銃を差していて、テンガロンハットとウエスタンブーツを履いている。顔はもちろん覆われているので分からないが、見るからに長身で筋肉質でしかもリーダであれば恰好悪いはずはない。私はかっこいい姿に痺れ、一瞬、怪人の人質だと言うことを忘れる。
「そこまでだ! スライミー怪人!」
「キーッーヒィッい! バカめ、人質が見えないのか?」
「むっ!」
「もがっ、むがっ」
私の事はいいから早くやっつけてと言いたいが無理だった。
レッドと怪人が睨み合っていると、四方から、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクが到着する。
怪人はきょろきょろと5人を見渡し「お前ら、1人に5人って卑怯だろ!」と叫ぶ。
ブルーが静かに答える。
「悪いことする方が悪い」
「……」
冷静なブルーの一言に怪人は押し黙る。その瞬間、ピンクが豊満な身体を揺らし始め、怪人の目を奪う。本当に巨乳で上下に激しく振り子のように揺れている。吹っ飛んでいきそうなおっぱいに私は逆に心配になる。
「あっ!」
ピンクの衣装が破れ、胸から何か飛び出した。
「げっ! やべえっ!」
柔らかそうなふにゃふにゃした水風船のようなものが飛んでいき、その破けた衣装の下には平らな胸と小さくて茶色い硬そうな乳首が見えた。
「!!!」
「!!」
「!」
「お、おまえ、ピンクってさ、普通女だろ! だましやがってええ」
怪人の憤りにピンクも逆切れする。
「お前らの勝手なイメージだろうが!」
ピンクと怪人を見守っていると怪人の手が緩み、その手をバシッと叩き落とし、私を救い出してくれた。
「平気?」
イエローだった。明るい陽気な声にほっとして「はいっ」と答えると「じゃ、ここにいてね」とベンチに座らせてくれた。
人質もいなくなり、スライミー怪人はもはやここまでかと観念しはじめるが、最後にべとべとのゼリーをまき散らし、シャドウファイブの衣装や武器を汚す。
しかし彼らは人数だけの戦隊ではない。
大柄なグリーンが強力なウォッシャー液を噴霧する。途端にゼリーは溶解し始め、そしてまたスライミー怪人も溶けていく。
「グウウーうっ! おのれえ、まだまだ怪人がやってくるからなっ! くそー、ピンク、男か、ヨ……」
跡形もなくなりシャドウファイブは手を高く上げ、5人すべての手を重ねる。
「みんなは1人のために! 1人はみんなのために!」
どこかで聞いたことのある言葉だが、怪人に勝利し、私はほっとして拍手した。するとシャドウファイブが全員一斉にこちらを向き、やってくる。
「あ、ありがとうございました!」
「ん。いいんだ。だがピンクの事を誰にも言わないでもらえるかな」
リーダーのレッドが頼んできた。
「もちろんです!」
さすがに私もピンクが男ですなんてツィートしたりしない。しかしピンクが「でもさー。そんなん口約束じゃん」と心配そうに言いだした。
ブルーも「確かにもうピンクの噂が出てる。バストが不自然だって」と同調している。
「ここまでポロリしたの初めてだよなあ」
イエローも不安げで、グリーンも黙って俯いている。
「あ、あの、大丈夫ですよ。ピンクシャドウはいるだけで、モチベあがる存在ですし、そこまでおっぱい大きくしなくてもいいんじゃないかなーって」
私の言葉に5人はぱっと明るい様子を見せる。表情は見えないけれど。
「そうか、そうだよな。ピンクってさ、そもそも戦わなくてよくないか?」
「そうだよなあー。確かに」
「君、いい事いうねえ。名前は?」
「あ、はい。鈴木桃香 です」
「へえー、桃香ちゃんね。お仕事はなに?」
「前のとこやめて探してるところなんです」
「へえっ! おい、聞いたか?」
シャドウファイブは何やら相談し始める。そろそろ帰ろうかと思い、荷物をまとめていると「待って、待って」とレッドに声を掛けられる。
「あ、はい、なんでしょう」
「相談があるんだ。どうだろう。ピンクになってもらえないか?」
「え??」
「頼む。俺ももうピンクやだ!」
首からピンクのマスクを取ってしまい、その下からは童顔で目の綺麗な青年が出てきた。髪は薄茶色の巻き毛で目の色も薄い茶色で肌も白い。
「桃香ちゃん、戦わなくていいからさ。どうだろう? 求職中だよね。もしメンバーになってくれたら仕事も融通効くよ?」
「え?」
「俺たち5人はみんな商店街で自営業なんだ。こうして怪人が現れたらちょっと店を離れて出てくるのさ」
「いきなり、お店お休みするんですか?」
「いやいや、それは大丈夫、親父やお袋たちがいるからね。大型スーパーもあるしさあ、そこまで仕事の拘束きつくないってことなんだよ」
「は、はあ……」
「気に入った店で働きながらさあ、一緒に始動してくれないかな。その時はボーナス弾むからさ」
「え、ええーっと」
このままでは強引に入隊させられそうだと危惧していると、メンバーが全員マスクを取り自己紹介始めた。
「リーダーのレッドの田中赤斗です。32歳で家はイタ飯屋です」
きりっとした眉に黒目がちで濃い顔のイケメン、少し日焼けをしていて健康的だ。
「ブルーの山本青音。32歳、アンティークショップ」
やっぱり眼鏡かけてた。細おもてに知的な風貌で目つきが鋭い。
「イエローの井上黄雅。同じく32でおもちゃ屋やってる」
明るく気さくな王子様みたいな人だ。艶やかなロン毛で顔立ちはとても優しい。
「グリーンの高橋緑丸、32歳、接骨院経営です」
体格がとても良くてマッチョな人だけどおっとりした雰囲気だ。
「ピンク。もうやめるけど。松本白亜、32、美容院やってる。みんな同級生なんだ」
32歳で恐らく独身で私設でこの町の平和を守っているなんて。少し私は感動していると、ピンクこと松本白亜がマスクを手に渡してきた。
「じゃあ、明日からよろしく。俺は、裏方に回って敵の出方を調査する方に回るよ」
「ああ、そうだな。そういうのないと予測が立たないしな」
もう私は勝手にメンバーの一員に加えられ、逃げることが難しくなってしまった。
「あ、あの。ほんとに戦わなくていいですか?」
「もちろん! みんなで君を守るよ」
タイプの違うイケメン5人に守られて、平和を守る……。ちょっとだけ、やってみようかな。
「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」
「やったあー! 新メンバー、ピンクシャドウの誕生だ! 桃香ちゃん、よろしくね!」
「よろしく」
「頑張ろうね」
みんなに握手を求められ、なんだか自分も盛り上がってしまった。そしていつの間にか手をあげ、6人でポーズを決める。
「みんなは1人のために! 1人はみんなのために!」
そのあと、すぐに新人歓迎会をやろうと、レッドこと、田中赤斗の経営するイタリアンのお店に行き、そのまま夜更けまで宴会となった。
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