年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
とはいえもう籍は入れてしまった。
せめて彼女が俺と結婚して良かったと思えるように、結婚生活に負担がかかることがないようにしよう。
そう誓った俺は、同棲初日に彼女に告げた。
この結婚は平等であること。
結婚には身分なんて全く存在しない。
俺や俺の家族に対して嫌なことがあれば口に出していいし、意思表示をきちんとしてほしい。
そして彼女に自分の部屋を与え一緒に眠らなくていいことや、無理に話をする必要の無いこと、自由に過ごして貰って構わないと伝えた。
彼女が気を遣わぬよう、自分が過ごしたいように過ごせるように配慮したつもりだった。
しかし、彼女は父の会社を辞め家庭に入り俺の一歩後ろを静かに歩く妻になった。
食事も彼女が作ろうとするので、負担にならないように外で食べて来て、出来る限り寝に帰る生活。
夜まで起きていて、俺の帰りを待つ沙織に「待たなくていい」と伝えてみたが、彼女は甲斐甲斐しく俺に尽くそうとしてくれた。
冴島製鉄所で働いている時、彼女の強くて彼女らしい考え方に惹かれたが、結婚してから沙織が自分の気持ちを言葉にすることは一度も無かった。
母に何か言われても、着たいドレスがあっても沙織は静かに今ある状況を受け入れた。
こんな風に彼女がなったのは俺のせいだ。
そう思えば思うほど自分に腹が立った。