年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
俺は考えた末、覚えていないフリをした。その時見た彼女の傷ついたような表情を見て、自分は選択を誤ったんだと気づいた。
しかし、取り消すことも出来ない。
もう一度彼女のいないところで考えたくて、部屋から出て行って欲しいと伝えてしまった。
散らかった服を掻き集め、落ちていた彼女の髪飾りを拾って机に乗せた。
昨夜のこと、覚えていると言った方が良かったのだろうか。身体を合わせてしまっては、確実に関係は変わってしまう。
それを怖がらず受け入れれば良かったのだろうか。
ベッドのシーツを直しながら、ここで寝ていた彼女の匂いがふわりとした。
昨日は愛おしい香りであったが、今はほんの少し切ない香りがする。
それから答えが出ないまま風呂に入り、仕事へと出掛けた。
彼女が部屋から出て来ないのは初めてだった。
どうすればベストだったのか。
その日は身が入らず、一日考え続けた。
自分の気持ちを曝け出した時、彼女は嬉しいと伝えてくれた。俺も沙織が思っていることを伝えてくれた時は、すごく嬉しかった。