年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
しらばくして園城さんの寝室を開けてみると、彼はすやすやと眠っていた。
先ほどよりも幾分顔色が良くなっていてほっとする。
きっと寝不足もあったのだろう。
目の下にはくっきりクマが浮き出ていてた。
少し生ぬるくなった氷枕を新しい物に変えて、苦しそうに閉まっている首元をワイシャツのボタンを2つ外して楽にしてあげる。
少し落ちついた様子だったので、帰ろうか迷ったけれど、鍵がないことに気づいて、起きるまで待っていることにした。
ぐっすり寝てる。
睫毛が長く伸びていて、呼吸するたびに揺れている。
園城さんの寝顔をここまで近くで見たのは初めてかもしれない。
本当にキレイな顔だな……。
ぼーっと眺めていた時、園城さんの眉間にぐっと皺が寄る。
苦しそう。
どんな夢を見ているんだろう。
そう思った瞬間、彼がうわ言のようにつぶやいた。
「沙織」
──ドキ。
えっ……私の名前?
急に見てはいけないものを見たような気がして、私は慌てて彼から顔を逸らす。
ち、違うよね。
だって沙織なんて名前たくさんいるし、それに……私を名前で呼んだのなんて数えられるだけ。これは違う沙織さんだ。