年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
まだぼーっとしているのか、状況が飲み込めていないみたいだ。
「食欲無くても少し食べておいた方がいいですよ」
ゆっくりと身体をおこした園城さんはようやく状況を把握したのか、「おかゆだ……」とつぶやいた。
ふふ、さっき説明したのに。
寝ぼけてる姿がまるで子どもみたいで、クスクス笑いながら彼を起き上がらせた。
「食べられそうですか?」
「ああ、食べたい」
今日の園城さんは素直だ。
「熱いですからね」
私は蓮華を持ち、園城さんの口の前まで運ぶ。しかしその瞬間、我に返った。
「……っ!す、すみません」
なにしてるの私……。
もう妻でもないのに、食べさせてあげるなんて出しゃばった真似を……。
こんな甲斐甲斐しく介抱されても迷惑だろう。
「……自分で食べられますよね!」
私が慌てて蓮華を下げると、園城さんはそっぽを向きながら答えた。
「いや、食べられないかもしれない」
「えっ!」
「その……なんだ。手がちょっとしびれてるような」
「それ大丈夫なんですか!」
「ああ、心配はいらない程度だ」
変に他所を向いて、伝える園城さんに甘えたいんだと分かり、私は思わず笑ってしまった。
風邪を引いたら心細くなるっていうし……。
「じゃああの……口を開けてくださいね」
冷ましたおかゆをそっと口元に運ぶと園城さんはパクッとそれを食べた。