年の差契約婚~お別れするはずが、冷徹御曹司の愛が溢れて離してくれません~
「……美味いな」
まるで心の底から出たようなつぶやきに思わず口角が上がってしまう。
「ただのおかゆですよ」
「もっと食べたい」
「冷ましますので待っててください」
恋人同士みたいなやり取りに我に返ると恥ずかしくなってしまうため、これはただの介抱だと自分に言い聞かせた。
「久しぶりにまともに食事した気がする」
パーティや宴会があるような時でも園城さんは色んな人と話しっぱなしでまともに食事をしていないように見えた。
私は蓮華を園城さんの口元に運びながら訪ねた。
「いつもどんなものを召し上がっているんですか?」
「忙しい日は食べなかったり、後は仕事中に食べられるゼリーを飲んだりしてるな」
「それは食事といいません。しっかり食べないとまた今日みたいに倒れてしまいますよ」
思わず伝えてしまった説教くさい言葉にはっと我に返る。
「すみません……私にこんなこと言われてもですよね」
もう妻ではないのに、側にいて支えている人のような口ぶりで言ってしまった……。
「いや、その通りだ。これからは気をつけるつもりだ」
園城さんはパクパクと食べ進めていて、あっという間におかゆを完食した。
「わざわざすまなかったな。キミには迷惑を掛けてばかりだ」